十刹

十刹とは

十刹（じっせつ）は、中世日本の禅宗寺院における寺格の一つで、五山に次ぐ格式を持つ寺院群を指します。この制度は、南宋時代の中国で五山と共に設けられた十刹の制度が起源とされています。日本においては、鎌倉時代末期から室町時代にかけて、その制度が整備され、多くの寺院が十刹に指定されました。

十刹の成立と変遷

南宋における起源

十刹の制度は、南宋の寧宗時代に、インドの五精舎十塔所の故事に倣い、五山と共に寺院を保護するために設けられたとされています。この制度が、後に日本へと伝わりました。

日本における成立

日本では、建武の新政の頃には既に南禅寺や浄妙寺といった寺院が十刹に指定されていたとされています。当初は、京都の寺院だけでなく、地方の寺院も含まれていました。しかし、室町幕府が成立すると、その支配体制の中で十刹の制度も再編されることになります。

室町幕府による再編

室町幕府によって「天下十刹」が定められましたが、その内容は時代によって変動し、寺院の順位も度々変わりました。特に、至徳3年（1386年）には、五山制度の改革に合わせて十刹制度も改革され、京都と関東（鎌倉）にそれぞれ10の寺院が選ばれることになりました。この際、地方の寺院は「天下十刹」の資格を取り上げられることがあり、反発も招きました。その後、十刹の枠外として追加される寺院も現れ、最終的には46寺、さらに60寺にまで増加しました。

天下十刹の変遷

十刹は、時代によってその構成寺院が変化しました。以下に、主な時期における十刹の構成寺院を紹介します。

暦応4年（1341年）

• - 浄妙寺（第一位、後に五山に昇格）
• - 禅興寺（第二位、後に廃寺）
• - 聖福寺（第三位）
• - 京都万寿寺（第四位、後に五山に昇格）
• - 東勝寺（第五位、後に廃寺）
• - 鎌倉万寿寺（第六位、後に廃寺）
• - 長楽寺（第七位、後に天台宗に改宗）
• - 真如寺（第八位）
• - 北禅寺（第九位、後に廃寺）
• - 豊後万寿寺（第十位、後に廃寺となるが再興）

延文3年（1358年）

• - 禅興寺
• - 聖福寺
• - 鎌倉万寿寺
• - 東勝寺
• - 長楽寺
• - 真如寺
• - 北禅寺
• - 豊後万寿寺
• - 清見寺
• - 臨川寺

康暦2年（1380年）

この時期には、十刹に加えて準十刹が6寺定められました。

• - 等持寺
• - 禅興寺
• - 聖福寺
• - 東勝寺
• - 鎌倉万寿寺
• - 長楽寺
• - 真如寺
• - 北禅寺
• - 豊後万寿寺
• - 清見寺

準十刹

• - 臨川寺
• - 宝幢寺
• - 瑞泉寺
• - 普門寺
• - 宝林寺
• - 国清寺

至徳3年（1386年）

この時期に、京都十刹と関東十刹（鎌倉十刹）が定められました。

京都十刹

• - 等持寺（第一位、天龍寺派寺院として現存）
• - 臨川寺（第二位、天龍寺派寺院として現存）
• - 真如寺（第三位、相国寺派寺院として現存）
• - 北禅寺（第四位、後に廃寺）
• - 宝幢寺（第五位、鹿王院として現存）
• - 普門寺（第六位、東福寺の常楽庵として現存）
• - 広覚寺（第七位、後に廃寺）
• - 妙光寺（第八位、建仁寺派寺院として現存）
• - 大徳寺（第九位）
• - 竜翔寺（第十位、大徳寺派寺院として現存）

関東十刹

• - 禅興寺（第一位、後に廃寺、現在は建長寺派寺院明月院が名跡を管理）
• - 瑞泉寺（第二位、円覚寺派寺院として現存）
• - 東勝寺（第三位、後に廃寺）
• - 鎌倉万寿寺（第四位、後に廃寺）
• - 大慶寺（第五位、円覚寺派寺院として現存）
• - 興聖寺（第六位、後に廃寺）
• - 東漸寺（第七位、建長寺派寺院として現存）
• - 善福寺（第八位、後に廃寺）
• - 法泉寺（第九位、後に廃寺）
• - 長楽寺（第十位、後に天台宗に改宗）

文明末年（1486年）

文明末年には、十刹は46寺にまで増加しました。

まとめ

十刹は、五山制度を補完する寺格として、中世の禅宗寺院の発展に大きな役割を果たしました。その変遷は、時代の流れとともに寺院の盛衰を物語っており、日本の歴史や文化を理解する上で重要な要素となっています。

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