秋山虎繁

秋山虎繁：武田家を支えた勇将の生涯

秋山虎繁は、戦国時代から安土桃山時代にかけて活躍した武将で、甲斐武田氏の重臣として知られています。武田信玄と勝頼の二代に仕え、その武勇と知略で数々の戦を支えました。武田二十四将の一人にも数えられ、その名は後世にまで語り継がれています。

生涯

出自と初期の活動

虎繁の出自については諸説ありますが、確実な記録としては天文18年（1549年）の武田氏朱印状に奏者として名が見えるのが初見です。その後、天文22年（1553年）には信濃国葛尾城の戦後処理を担当するなど、早くから武田家中で活躍していたことが窺えます。

弘治2年（1556年）には伊那郡代に任じられ、大嶋城の城代を務めました。この頃から、伊那郡における軍事・外交の中枢を担うようになり、その手腕を発揮しました。

伊那郡代としての活躍

『甲陽軍鑑』によれば、虎繁は当初高遠城の郡代であったとされますが、後に飯田城へ移ったとされています。ただし、高遠城に在城した記録は確認されていません。永禄初年頃には、美濃国境での軍事活動にも関与し、美濃の斎藤道三の動向を武田晴信に報告していたとされています。また、遠山氏支援のため、苗木城に在番していた可能性も指摘されています。

永禄2年（1559年）には、伊那郡の所領紛争を解決するなど、郡代としての実務能力も発揮しました。この頃から、美濃・遠江・三河方面の軍事・外交に携わるようになり、武田家にとって重要な役割を担いました。

永禄2年から8年（1565年）頃には「伯耆守」の受領名を受け、織田信長との同盟交渉の取次を務めました。しかし、永禄8年（1565年）には美濃で織田軍との間で軍事衝突が発生し（高野口の戦い）、両勢力の対立は激化しました。

駿河侵攻と西上作戦

永禄11年（1568年）の駿河侵攻では、武田軍は徳川家康と同盟を結んでいましたが、遠江への侵攻をめぐり両者の間に亀裂が生じました。虎繁は伊那衆を率いて遠江に侵攻し、徳川方から抗議を受けています。

元亀元年（1570年）には、三河へ侵攻する途中で東美濃の遠山氏領に侵入し、遠山氏や徳川氏連合軍と合戦しました（上村合戦）。その後、織田信長の派遣した明智光廉の軍勢と戦い、信濃に撤退しました。

元亀3年（1572年）の西上作戦では、別働隊を率いて奥三河を攻略し、奥平氏などの諸城を陥落させました。その後、信玄本隊と合流し、美濃方面を担当しました。

元亀4年（1573年）には、織田信長の叔母であるおつやの方と婚姻し、岩村城に入城しました。これにより、虎繁は大嶋城代と岩村城代を兼任することになりました。

武田信玄の死と最期

信玄の死後、虎繁は後継者の勝頼に仕えました。天正3年（1575年）の長篠の戦いで武田軍が敗北すると、織田・徳川勢は武田氏への反攻を強めました。岩村城を包囲された虎繁は、救援を求めましたが、勝頼は援軍を送ることができませんでした。最終的に虎繁は、城兵の助命を条件に織田信忠に降伏しました。

しかし、織田軍は約束を破り城兵を殺害し、虎繁は妻のおつやの方、家老の大嶋長利・座光寺越後守とともに岐阜へ連行され、長良川で逆さ磔に処刑されました。享年49歳でした。

人物

虎繁は、武田家の中でも特に武勇に優れた武将として知られています。また、外交や内政にも手腕を発揮し、伊那郡の統治を安定させました。信玄からの信頼も厚く、重要な局面で活躍しました。

諱について

虎繁の諱については、かつては「信友」や「春近」など諸説がありましたが、近年の研究により「虎繁」が正しいことが判明しました。「虎」は武田信虎からの偏諱と考えられています。

子孫

虎繁の子孫については諸説あります。養子の秋山昌詮は早世し、その弟が家督を継ぎましたが、織田・徳川連合軍との戦いで戦死しました。その子孫は伊豆に落ち延びたという伝承や、水野氏に仕えたという記録があります。おつやの方との間に生まれた六太夫は、村上水軍に仕えて討ち死にしたと伝えられています。

五仏寺

岩村藩主の丹羽氏純は、虎繁の祟りを鎮めるため、五仏寺を建立しました。現在、妙法寺の境内には、虎繁とおつやの方を供養する「まくら塚」が残っています。

まとめ

秋山虎繁は、武田家を支えた名将であり、その生涯は戦国時代の激しさと、武士の誇りを示すものとして、今も多くの人々に語り継がれています。

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