定澄

定澄（じょうちょう）について

定澄は平安時代中期の僧侶であり、特に興福寺の別当として知られています。彼の生涯は多くの宗教的な活動や朝廷との関係の中で展開されました。壬生氏に生まれ、左京出身の定澄は延喜19年（919年）に17歳で得度し、以後、仁和寺別当の寛空や興福寺別当の空晴に学びました。彼の宗教的なキャリアはここから始まります。

定澄は永延2年（988年）には興福寺に籍を持ち、その後の維摩会では講師として活動しました。長徳元年（995年）には権律師に任じられ、西大寺の別当に就任しました。その後、長保元年（999年）に興福寺権別当、翌年には正任の別当として活躍します。さらに、彼は権少僧都として龍蓋寺と龍門寺の別当職も兼任し、多忙な日々を過ごしました。

講師としての活動も精力的で、特に長保4年（1002年）には清涼殿で初めて行われた最勝講にも参加しました。長保5年（1003年）には権大僧都に任命されて法務も兼任するなど、その地位を高めていきました。

興福寺別当に就任した年、定澄は朝廷に対して大和国内での犯罪人追捕のため、検非違使の派遣を要請しました。大和守として新たに任命された源頼親との間で所領を巡って対立が発生しました。彼は藤原道長に頼親の解任を訴えましたが、交渉は難航し、最終的には大衆が威圧目的で入京する騒動に発展する事態となります。

寛弘6年（1009年）には興福寺の僧が大和守の従者を殺害する事件が起こり、定澄は必死に弁解に努めるものの、藤原道長からは興福寺に紛争が多いのは別当であるという叱責を受ける結果となります。ただし、定澄自身は朝廷や藤原氏九条流の仏事に積極的に供奉し、高僧としての地位を保ちました。

長和4年（1015年）には、疫病平癒のために行われた臨時仁王会の総講師を務め、功績を残しました。同年10月には藤原道長の五十の賀の法会で導師を担当しましたが、急性の病に見舞われ、辞去することとなりました。翌月になって彼はこの世を去りました。

特に彼は身長が高かったため、「定澄僧都に袿なし」という噂が立ちました。清少納言の『枕草子』にもそのことが記されており、当時の人々に印象深い存在感を示していたことが伺えます。一条天皇の内裏には彼の背の高さにちなんだ梨の木があり、源成信が定澄を引き合いに冗談を言ったこともありました。

まとめると、定澄の生涯は宗教的な活動のみならず、権門との複雑な関係や政治的な動きが交錯したものと言えます。その業績は、後世においても影響を与え続けています。彼のストーリーは、平安時代の仏教界の姿を垣間見る貴重なものです。

関連作品

テレビドラマ『光る君へ』（2024年、NHK大河ドラマ、演：赤星昇一郎）

参考文献

• - 森公章「源頼親と大和源氏の生成」『東洋大学文学部紀要 史学科篇』 43巻、東洋大学、2017年。
• - 東京大学史料編纂所編『大日本史料 第二編』、東京大学出版会、1968年。
• - 『枕草子』松尾聰、永井和子（注・訳）、小学館〈新編日本古典文学全集〉、1997年。

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