宮人

宮人（きゅうじん/くにん）とは

宮人とは、律令制において宮中に奉仕する女性職員のことです。本記事では、中国と日本における宮人の役割、選抜、待遇、そしてその歴史的変遷について解説します。

中国における宮人

明代において、当初は後宮の女性全般を指す言葉でしたが、制度化が進むにつれて后妃や女官以外の後宮女性を指すようになりました。

宮女の選抜と昇進

宮女は主に「良家子」から選抜されました。良家子とは、医者、巫者、商人、手工業者を除いた士民を指します。戦争や家族の犯罪によって宮女になることもありました。能力のある宮女は女官に昇格したり、皇帝の寵愛を受けて后妃に取り立てられることもありました。また、皇族に与えられてその妻妾となる例もありました。

宮人の境遇

多くの宮人は過酷な境遇に置かれており、嘉靖帝が襲撃される壬寅宮変の原因になったとも言われています。しかし、万暦帝の生母に仕えた宮人のように、高位の称号を得る者もいました。皇帝の幼少期の養育係である乳母や保母も宮人から選ばれることが多く、皇帝から厚遇を受けることもありましたが、皇帝の死とともに権力を失うことが多かったようです。

日本における宮人

日本の後宮制度は飛鳥浄御原令の頃に整備されました。

律令制下の宮人

大宝令・養老令の後宮職員令には「宮人職員」として後宮十二司の職事と散事（女孺・采女・氏女）から構成されていました。宮人には官位相当は存在しませんでしたが、職事は四等官に相当するとされ、季禄支給の基準として准位が設定されました。縫殿寮が考課を審査し、これに基づいて中務省が叙位と位記を発給しました。ただし、采女は采女司の管轄でした。

後宮以外の宮人

後宮以外にも、東宮職や斎宮寮には、それぞれ東宮・斎宮に仕える宮人がおり、その管理はそれぞれの官司が行いました。

宮人の役割の変化

大化以前から律令制前期にかけては、男性官人が自由に天皇の日常空間に出入りできなかったため、奏上・宣下は宮人を通じて行われるのが普通でした。しかし、奈良時代後期になると内裏の重要性が増し、男性官人が内裏に立ち入ることが珍しくなくなりました。この時期から、「宮人」という名称に代わって「女官」という呼称が用いられるようになりました。

参考文献

磯貝正義「宮人」（『国史大辞典 4』吉川弘文館、1984年）
大隅清陽「宮人」（『日本史大事典 2』平凡社、1993年）

関連項目

後宮
女官

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