職事

職事（しきじ）

職事とは、律令制下において特定の官人集団を指す言葉です。元々は一定の職務を意味し、それが転じて職務を担う官人を指すようになり、職事官とも呼ばれるようになりました。

職事官

日本における職事官

日本では、中央官司・大宰府・国司の四等官および品官が職事官に該当します。これらは長上官の中でも内長上と呼ばれる人々に相当し、公式令においては内外諸司で執務を行う者を、官位令においては官位相当の規定を持つ者を指します。ただし、公式令・官位令・選叙令・禄令・衣服令など、各法令の間で職事の範囲に若干の差異が見られます。

唐の制度では職事官と散官が対になっていましたが、日本では必ずしもそうなっていません。位階を持っていても職務を伴わない散位は職事には含まれません。また、長上官であっても外長上に当たる郡司や軍団の大少毅、国博士、国医師などは職事には含まれませんでした。郡司や大少毅は「外職事」と呼ばれることもありましたが、法的な規定に基づくものではありません。内舎人や兵衛、使部、直丁なども職事には該当しません。

在京の文武職事と大宰府・壱岐・対馬に勤務する職事官は、半年ごとに120日以上出勤することで、それぞれの官位に応じた季禄が支給されていました。国司など地方の職事官には別の規定があり、散位にも異なる基準で季禄が与えられました。

職事官にあたる四等官と品官は、官司機構の主体を構成する現職の官人層であり、律令国家の中核を運営する人々でした。

女官

女官（宮人）には官位相当は存在しませんが、四等官を模して「尚・典・掌」からなる三等官の制度がありました（准位と呼ばれる官位相当に代わる制度があります）。後宮職員令では、この三等官を職事、それ以下の女孺・采女・氏女などを散事と区別しています。

蔵人所

後宮十二司の女官（宮人）の機能の一部を代行する形で成立した蔵人所においても、その主体をなす五位蔵人・六位蔵人を指して「職事」と称しました。蔵人頭については、職事に含める場合と除外する場合があります。蔵人は官位相当に属さない令外官でしたが、蔵人頭・五位蔵人・六位蔵人といった蔵人所の正規の要員は、職事官と同様に重要な役割を担っていました。これに対して、見習いである非蔵人は「非職」と呼ばれました。

後宮に倣って摂関家や親王家に蔵人所が設置された場合には、同様の役割を担う家司を「職事」と呼んだり、同じく家政機関の一つである侍所別当を「職事」と称したりする事例も見られます。

参考文献

山田英雄「職事（1）」『国史大辞典 7』（吉川弘文館 1986年）ISBN 978-4-642-00507-4
野村忠夫「職事」『日本史大事典 3』（平凡社 1993年）ISBN 978-4-582-13103-1
藤木邦彦「職事」「職事官」『平安時代史事典』（角川書店 1994年）ISBN 978-4-040-31700-7
吉川真司「職事」『日本歴史大事典 2』（小学館 2000年）ISBN 978-4-09-523002-3

関連項目

散官
散位

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