宮城野馬五郎

大相撲の歴史において、「宮城野馬五郎」という名称は、現役力士が土俵上で用いる四股名として、そして引退後に後進の指導や部屋の運営を担う年寄が襲名する名跡として、重要な位置を占めています。特に、伝統ある宮城野部屋と深く関連しており、この名前を名乗ることは、その歴史と系譜を引き継ぐことと同義とみなされてきました。ここでは、文献や記録に見られる歴代の「宮城野馬五郎」について、その歩みを紹介します。

史料に最初に「宮城野馬五郎」として登場するのは、1793年に生を受けた人物です。この力士は、現役時代には「荒馬大五郎（あらうまだいごろう）」という四股名で土俵に上がりました。当初は桐山部屋に所属していましたが、後に部屋を移り小野川部屋の力士となります。最高位は関脇まで昇進し、当時の番付において上位で活躍した実力者でした。土俵生活から退いた後、彼は年寄名跡である「2代宮城野」を襲名し、この際に「宮城野馬五郎」と名乗るようになりました。年寄としての具体的な事績については詳細が不明な点もありますが、宮城野という名跡の歴史における初期の重要な継承者であると言えます。

次に「宮城野馬五郎」の名を継いだのは、1826年生まれの力士です。彼は宮城野部屋に所属し、現役時代の最高位は小結でした。彼の現役時代の四股名については、はっきりとした記録が見当たりませんが、宮城野部屋所属力士として幕内上位に位置する小結まで昇進したことは、実力があったことを示しています。この人物の重要な点は、彼が先代にあたる2代宮城野（荒馬大五郎）の弟子であったことです。師から弟子へと宮城野の名跡が受け継がれた最初の事例であり、相撲界の伝統的な師弟の絆による継承の形を示しています。現役を退いた後、彼は「4代宮城野」を襲名し、この際に「宮城野馬五郎」と名乗りました。

そして、歴代の「宮城野馬五郎」の中で、最も高い地位まで昇進したのが、1866年に生まれた人物です。この力士は、現役時代には「鳳凰馬五郎（おおとりうまごろう）」の四股名で知られていました。彼は、師匠である4代宮城野（宮城野馬五郎）が率いる宮城野部屋で相撲人生をスタートさせましたが、後に所属部屋を錦戸部屋へと移しています。彼の特筆すべき功績は、最高位が大関まで昇進したことです。大関は横綱に次ぐ、相撲界における最高権威である地位であり、この人物の卓越した実力と人気を物語っています。彼もまた、先代の4代宮城野（宮城野馬五郎）の弟子という関係であり、師弟による名跡継承の伝統を守る形となりました。引退後、彼は「5代宮城野」を襲名し、「宮城野馬五郎」と名乗りました。年寄としては、後進の指導や部屋の運営に尽力し、大相撲の発展に貢献したと考えられます。

このように、「宮城野馬五郎」という名称は、異なる時代に生きた複数の実力ある力士たちによって引き継がれてきました。彼らの最高位は関脇、小結、大関と様々ですが、いずれも当時の相撲界で重要な役割を果たした人物たちです。そして、これらの継承が師弟関係を通じて行われてきた事実は、大相撲における師弟の絆と名跡の重みを象徴しています。「宮城野馬五郎」という名は、単なる個人名や部屋の名前を超え、宮城野部屋の長い歴史と、相撲界全体の伝統、そして代々受け継がれてきた実力と指導力を示す、由緒ある名称として今に伝えられています。

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