宮島清次郎

宮島清次郎

宮島清次郎（1879年1月20日 - 1963年9月6日）は、大正・昭和期に活躍した日本の経営者、財界人です。日清紡績の社長・会長を務め、同社を業界屈指の優良企業へと成長させました。また、日本工業倶楽部理事長、東京市会議員としても活躍しました。

生い立ちと青年期

栃木県安蘇郡飯田町（現在の佐野市）で、実業家・小林庄太郎の次男として生まれました。宇都宮中学校（現在の栃木県立宇都宮高等学校）時代には問題行動が多かったため、東京の商店で丁稚奉公を経験しました。この経験が、後に働く者の立場を重視する経営姿勢を培ったと考えられています。第四高等学校（現在の金沢大学）を経て、1906年に東京帝国大学法科大学政治学科を卒業しました。

住友入社から宮島家へ

大学卒業後、住友別子鉱業所（現在の住友金属鉱山）に入社。その後、東京紡績社長・田村利七の知遇を得て、1910年に利七の娘・盛子と結婚し、宮島家の養子となります。同時に東京紡績に入社し、専務取締役まで昇進しました。

日清紡績での活躍

1914年、東京紡績が尼崎紡績（現在のユニチカ）に吸収合併されたのを機に退職し、岩崎清七の斡旋で日清紡績に専務取締役として迎えられました。1919年には社長に就任し、徹底した合理主義経営を推進しました。また、従業員の待遇改善にも取り組み、1929年には業界でいち早く深夜操業を廃止しました。これらの功績により、日清紡績は好不況に左右されない優良企業へと成長しました。1922年には東京市会議員にも当選しています。

経済界での活躍と晩年

1930年代以降は経済界で幅広く活躍し、1938年には国策パルプ（日本製紙の前身）の社長に就任しました。この仕事を通じて、水野成夫や南喜一といった経営者を育成しました。1940年に日清紡績社長を退任し会長に就任。1945年には会長も退任し、後進に道を譲りました。

戦後は、水野成夫や桜田武などの門下生をまとめ、吉田茂政権の支援体制確立に尽力しました。1949年には大蔵大臣のポストを打診されましたが固辞し、代わりに池田勇人を推薦しました。自身は日本銀行政策委員に就任し、1955年まで務めました。また、1948年には日本工業倶楽部理事長に就任し、終身その職を務めました。1951年根津育英会理事長、1959年根津美術館理事長にも就任しました。

1963年9月6日、老衰のため84歳で逝去。遺言により叙位叙勲は辞退しました。墓所は杉並区の真盛寺にあります。

人物像

「感謝報恩」を座右の銘とし、生涯清貧な生活を貫きました。工業倶楽部理事長時代には、洗面所でお湯が使えないという苦情に対し、「水で手洗いして冬が越せないような老人に経営はできない」と一喝したという逸話が残っています。1950年には、母校である宇都宮高校に鉄筋コンクリート製の図書館を寄贈するなど、社会貢献にも尽力しました。晩年には自宅まで売却しようとしたほど、自身の財産を社会に還元しようとしていました。

栄典と家族

1930年、帝都復興記念章を受章しましたが、生前叙勲を拒否していました。この理由について、桜田武は「会社のために働いて死んだ連中に俺だけ勲何をもらって、あの世であえるかい」という心情と「男子の一生を賭けた仕事に政府から勲何等なんて等級をつけられてたまるか」という町人としての誇りがあったからだと述べています。

父の小林庄太郎は実業家、兄の小林清一郎は鉱山業を営んでいました。妻のセイは田村利七の娘で、結婚後に宮島家の養子となっています。

関連人物・事項

財界四天王
吉田茂
* 池田勇人

もう一度検索