宮里静湖

宮里静湖（みやざと せいこ、1907年2月22日 - 1985年11月2日）は、昭和期の沖縄県で多岐にわたる分野で活躍した人物です。詩人、作詞家、小説家、そして郷土史家としての顔を持ち、その足跡は沖縄の文化史に深く刻まれています。本名は宮里正光（みやざと せいこう）といい、小説を執筆する際には「宮里政光」のペンネームも用いました。

1907年、宮里は沖縄県島尻郡具志川村（現在の久米島町西部）仲泊で誕生しました。沖縄師範学校では宮良長包に師事し、その音楽的才能を開花させました。卒業後、宮良とともに童謡「船路」や「桑の実」を発表し、久米島に伝わる民謡「阿嘉の鬚水」を原曲とした「荒磯の歌」は、1964年に音楽の教科書に掲載されるほど広く知られるようになりました。また、久米島小学校の校歌も手がけています。

教員を辞した後、宮里は上京し、伊波南哲の知遇を得て詩誌の編集に携わりました。1941年から1943年頃には、『文学人』や『日本文学者』といった同人誌で活動。その後、満州に渡り就職しましたが、応召によってソ連軍の捕虜となり、シベリアに抑留されるという過酷な体験をしました。抑留生活を経て帰国した後は、沖縄で教職に復帰し、仲里小学校校長、久米島教育事務所長、那覇連合教育区次長などを歴任しました。

戦後の沖縄では、シベリア抑留の経験を基にした詩「望郷」や小説「青い目、黒い目」「獣人」などを発表し、文筆家としての活動を精力的に行いました。1972年の沖縄返還の際には、県民歌の歌詞募集で応募作が入選し、「沖縄県民の歌」として制定されたことは、宮里の功績の中でも特筆すべき点です。また、郷土史家としても『久米島具志川村史』の編纂に携わるなど、その多才ぶりを発揮しました。

宮里の主な著作としては、作詞では「船路」「桑の実」「荒磯の歌」「沖縄県民の歌」「久米島町立久米島小学校校歌」などがあります。詩集には『山原 教育の四季』や『港の歴史』があり、小説作品には「青い目、黒い目」「獣人」「山峡」などがあります。郷土史関連では、本名名義で『みどり丸遭難誌』や『久米島具志川村史』を編纂しました。

宮里静湖は、激動の時代を生き抜き、沖縄の文化、教育の発展に大きく貢献しました。その作品は、今もなお多くの人々に愛され、沖縄の歴史を語る上で欠かせない存在です。

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