富士五山

富士五山（ふじござん）は、鎌倉時代末期に日蓮宗の開祖である日蓮の高弟、日興によって創設された五つの有力な寺院の総称です。これらの寺院は、現在の静岡県富士市周辺、当時の駿河国富士郡に位置し、日興の法脈を継承する重要な拠点となりました。

具体的には、以下の五つの寺院が富士五山として知られています。

大石寺（日蓮正宗）：日蓮正宗の総本山であり、富士五山の中でも特に重要な寺院として知られています。
北山本門寺（日蓮宗）：日蓮宗の寺院で、富士五山の一つとして歴史を刻んでいます。
西山本門寺（単立）：他の宗派に属さず、単独で運営されている寺院です。富士五山の一角を担っています。
小泉久遠寺（日蓮宗）：日蓮宗の寺院で、富士五山の一つとして歴史的にも重要な存在です。
下条妙蓮寺（日蓮正宗）：日蓮正宗の寺院であり、富士五山の一寺として知られています。

これらの寺院は、いずれも日興の教えを忠実に守り、その法脈を継承してきた歴史を持ちます。

歴史

富士五山は、鎌倉時代の末期に日興とその弟子たちによって創設されました。各寺院は、日興の法脈を受け継ぎ、『甲斐国志』には「富士五箇寺」と記されています。この記述からも、当時の人々がこれらの寺院を特別な存在として認識していたことが窺えます。

また、富士五山は今川氏や徳川氏といった時の権力者からも手厚い保護を受けていました。特に、今川氏の時代には、大石寺、小泉久遠寺、北山本門寺が無縁所として指定され、その保護政策が確認されています。徳川時代には、西山本門寺と下条妙蓮寺が同様の扱いを受けました。

江戸時代の貝原益軒の紀行文『壬申紀行』には、「富士のすそ野に日蓮宗の五ヶ寺あり。北山の重巣本門寺、西山門本寺、上野の妙蓮寺、大石寺、大宮の久遠寺あり」と記されています。この記述からも、当時の人々が富士五山を一つのグループとして認識していたことがわかります。また、羽倉簡堂が天保9年（1838年）に記した「東游日歴」には「岳西五大寺」とあり、原得斎が文政11年（1828年）に記した『富嶽行記』には「富（士）山の裾に五ヶ所の法華寺あり」とあります。これらの文献からも、「五寺」という認識が広く流布していたことが伺えます。

まとめ

富士五山は、日蓮宗の重要な拠点であり、その歴史と文化は現代にも受け継がれています。各寺院はそれぞれ独自の歴史と特徴を持ちながらも、日興の法脈という共通のルーツを持つことで、一つのまとまりとして捉えられてきました。これらの寺院は、宗教的な意義だけでなく、地域の歴史や文化を語る上でも重要な存在となっています。

参考文献

中村孝也『新訂 徳川家康文書の研究(新装版) 上巻』吉川弘文館、2017年。ISBN 978-4-64-273047-1。

関連項目

富士門流
興門八本山

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