下条妙蓮寺

下条妙蓮寺について

下条妙蓮寺（しもじょうみょうれんじ）は、静岡県富士宮市にある日蓮正宗の由緒ある寺院です。山号を多宝富士山と称し、正式名称は妙蓮寺といいます。この寺院は、日興の法脈を受け継ぎ、勝劣派、宗祖本仏論を奉じる富士門流に属しています。

かつては、静岡県東部に分布する大石寺、北山本門寺、西山本門寺、小泉久遠寺と共に「富士五山」を構成し、さらに京都要法寺、伊豆実成寺、保田妙本寺と合わせて「興門八本山」の一つにも数えられました。

明治時代には、富士門流の統一教団である日蓮宗興門派（後の本門宗）の結成に参加し、興門八本山から輪番制で選ばれる管長には、第3代として寺堀日善、第13代・21代として稲葉日穏が就任しています。現在の住職は46代目の慧澄院日実（漆畑日実）で、日蓮正宗宗務院海外部長も務めています。

特筆すべきは、表門と客殿で、この地域に残る木造建築としては最大級であり、富士宮市指定文化財に指定されています。

沿革

下条妙蓮寺の歴史は、正中元年（1324年）に始まります。大石寺開基である南条時光が、妻である妙蓮尼の一周忌供養のために、自らの邸宅跡を寺院とし、寂日房日華を開山として招いたのが始まりです。

その後、寺は数々の変遷を経験します。

1813年（文化10年）：客殿を再建。
1819年（文政2年）：表門を再建。
1876年（明治9年）：末寺7ヶ寺と共に、富士門流の統一教団である日蓮宗興門派の結成に参加。
1899年（明治32年）：日蓮宗興門派が本門宗と改称。
1900年（明治33年）：大石寺とその末寺が本門宗から離脱し、日蓮宗富士派（後の日蓮正宗）として独立。下条妙蓮寺は本門宗に残留。
1914年（大正3年）：本堂を北山本門寺の開山堂として移築。
1941年（昭和16年）：本門宗が一致派の日蓮宗、勝劣派の顕本法華宗と合同し、日蓮宗を結成。
1950年（昭和25年）：下条妙蓮寺は旧末寺6ヶ寺と共に日蓮宗を離れ、日蓮正宗に合流し現在に至る。日蓮宗に残留した旧末寺1ヶ寺（忠正寺）も1960年に日蓮宗を離脱して日蓮正宗に合流。江戸時代に本寺の触れ頭であった蓮華山妙典寺は日蓮宗に残留しています。
1972年（昭和47年）：蓮一坊・蓮二坊・蓮三坊・蓮四坊が建立。
1974年（昭和49年）：本堂を再建。
1981年（昭和56年）：宝蔵・鐘楼を建立。
1986年（昭和61年）：日華堂を再建。


開基とされる寂日房日華は、日蓮正宗において大石寺住職にのみ与えられる上人号を許された「日華上人」と称されます。日華上人は、大石寺開山である日興を補佐し、代官を務めたとされ、その功績から、大石寺塔中の寂日坊だけが朱塗りとされています。妙蓮寺の山法山規は大石寺に準じており、両寺院の間には深い関係がありました。

伽藍

寺院には、7つの塔中（本妙坊、心教坊、蓮光坊、蓮一坊、蓮二坊、蓮三坊、蓮四坊）があり、他に忠正寺（富士宮市）、蓮光寺（富士宮市）などの旧末寺があります。伽藍は、本堂（御影堂）、客殿、開基堂（日華堂）、方丈、山門、墓地などで構成されています。

境内地

妙蓮寺が南条邸跡であることは、総本山大石寺17世日精の記録にも明記されており、古くから争いはありませんでした。現在の境内地は農地解放により縮小しましたが、元々は妙蓮寺の寺名にもなっている妙蓮尼の墓所周辺を北限とし、南側墓地と下之坊の中間付近にあった総門を南限とする広大なものでした。東西の境界は、東が大堰堀、西が半兵衛堀であったと考えられています。

大行尊霊（南条時光）墓所

南条時光の墓所は、妙蓮寺の南西約1kmの宮前にあります。時光の父である南条兵衛七郎の墓所はさらに南西200メートルほどの高土にあり、文永2（1265年）に日蓮大聖人が墓参に訪れたとされています。時光の墓所には、妙蓮寺44代漆畑日広が昭和37年に建立した石塔があり、その際に時光の父と母の石塔も併せて建立されました。

文化財

下条妙蓮寺には、以下の市指定有形文化財があります。

客殿
表門
上庫裏
下庫裏
玄関

参考文献

日蓮宗寺院大鑑編集委員会 編『日蓮宗寺院大鑑』

関連項目

日蓮正宗寺院一覧
勝劣派
富士門流
本門宗
富士五山（北山本門寺、上条大石寺、西山本門寺、小泉久遠寺、下条妙蓮寺）
興門八本山（富士五山に加えて伊豆実成寺、保田妙本寺、京都要法寺）
* 池上本門寺

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