富田満

富田 満

富田 満（とみた みつる、1883年11月5日 - 1961年1月15日）は、日本のキリスト教における神学者、牧師です。彼は日本の教会合同運動および世界教会運動（エキュメニカル運動）の推進者として知られ、特に戦中から戦後にかけて、日本基督教会や合同教会である日本基督教団において指導的な立場を務めました。

生涯

富田満は、1883年に愛知県東春日井郡印場村（現在の春日井市）の農家に三男として生まれました。幼い頃から教会学校に通い、16歳で南長老ミッションの宣教師R・E・マカルピンより洗礼を受けました。1904年に明治学院神学部へ進学しますが、日露戦争に従軍。その後、神戸神学校に転校し、1909年に卒業しました。1911年に按手礼を受け牧師となり、1918年にはアメリカのプリンストン神学校に留学しました。帰国後、1920年から日本基督教会芝教会の牧師を務めます。

1929年には賀川豊彦と共に神の国運動中央委員長に就任し、社会活動にも関わりました。教会組織においては、1934年に日本基督教連盟総会議長、1938年には日本基督教会大会議長を歴任し、日本のプロテスタント教会における中心人物の一人となります。

戦後、1946年6月に日本基督教団統理者を辞任しますが、その後も常議員や総合伝道委員長として教団運営を支えました。また、戦後日本のエキュメニカル運動を指導し、日本キリスト教協議会（NCC）の創設にも携わりました。教育分野にも深く関与し、東京神学大学、明治学院大学、金城女子専門学校などで理事長を務めました。

思想と活動

富田の教会合同への熱意は早くから見られました。特に戦時色が強まる中、日本基督教連盟議長や日本基督教会大会議長として、国家の要求に応じた教会の一致を目指しました。1938年、日本基督教会大会議長として朝鮮を訪問し、神社参拝を拒否していた長老教会関係者と会談。神社参拝は国家の儀礼であり宗教行為ではないと説得し、信教の自由は憲法が認めているものの、それは人間の心の自由を憲法が追認したに過ぎないという独自の解釈を展開しました。神社参拝を拒否する行為は、明治天皇が賦与した信教の自由を冒涜するものだと主張したことは、特に知られています。

1941年、日本のプロテスタント教会の合同によって日本基督教団が成立すると、阿部義宗の辞退を受けて初代統理者に就任しました。教団設立後、文部省からの要求を受けて部制を廃止し、教団の完全合同を実現。「信仰を一つにするため」とこの措置の意義を説明しました。統理者として、自ら伊勢神宮を参拝して教団の設立を報告し、発展を祈願するという行動を取りました。また、戦時体制への協力を進め、教団総力を挙げて軍用機「日本基督教団号」を献納したほか、大東亜共栄圏のキリスト教徒に向けた書翰を送るなど、国家の方針に沿った指導を行いました。ホーリネス弾圧事件に際しては、文部省の指示を受け、逮捕された牧師たちの教会設立認可取り消しや辞任要求を本人たちに通知しました。

皇室からの招きを受け、宮中で天皇に謁見するという栄誉にも浴しました。終戦後も天皇への忠誠心を持ち続け、1945年8月15日の教団総会では「天皇陛下の御意志に従って国体護持に励むように」決議し、通達を発しました。一方で、戦後の常議員会で戦争責任を問われた際には、「余は特に戦争責任者なりとは思わず」と述べたとされます。

評価

富田満の指導については、様々な評価があります。日本の教会を厳しい国家の迫害から守るため、やむを得ず国家権力に融和的な姿勢を取ったとする見方や、当時の状況下で教会合同と維持に尽力した指導者として評価する声があります。日本キリスト教協議会の『キリスト教大辞典』では、「戦中、戦後の困難な時代にあって日本基督教団の指導にあたった」人物と評されています。彼の教会合同への取り組みは、本質的に世界の教会の成立を目指すエキュメニカルな精神に通じるものとされています。しかし、伊勢神宮参拝などの戦時下の行動については、教団の発展を日本の神に帰す行為であるといった批判的な評価も存在します。

著書

『富田満説教集:伝道説教-マルコによる福音書』 稲垣徳子編集 日本基督教団芝教会 1973年
『農民福音學校の理論と實際』 富田満編 神の國運動事務所 1931年
『神の國運動とは何ぞや』 海老澤亮述、富田滿編 神の國運動事務所 1931年
『神の國運動指針』 富田滿編集 神の國運動事務所 1929年
『神の國運動宣言書』 富田滿著 神の國運動事務所 1929年

関連項目

日本基督教連盟
日本基督教団
日本キリスト教協議会

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