寺村道成

寺村道成（てらむら みちなり）

寺村道成は、天保5年（1834年）に土佐藩士の家に生まれ、幕末から明治にかけて活躍した人物です。通称は麟三郎、のちに左膳。明治維新後は日野春草と改名しました。

生涯

生い立ちと藩政への参加

天保5年（1834年）、土佐藩士・寺村主殿成相の三男として高知に生まれます。国学を修め、その才覚から藩内で知られる存在となりました。文久2年（1862年）、前藩主・山内容堂に召し出され側用人となり、政治の中枢で活躍します。文久の改革に伴い、安政の大獄で処罰された人々の復権や容堂自身の謹慎解除に尽力。政務参与、御用部屋入りと順調に昇進し、江戸・京都において土佐藩の活動を担いました。

乾退助との対論と失脚

山内容堂の前で、武闘派の乾退助と時勢について対論した際、寺村は穏健な公武合体論を主張し、乾退助は尊皇攘夷論を唱えました。当初、寺村は吉田東洋に重用されましたが、土佐勤王党からは穏健派と見なされていました。しかし、土佐勤王党が勢力を失うと、寺村も容堂から遠ざけられ、側用役を罷免されます。

薩土盟約と大政奉還

慶応3年（1867年）、再び容堂の側用人に任ぜられ、側近として復帰。四侯会議の決裂後、容堂は帰国しますが、寺村は山内豊積（兵之助）を補佐し、京都に留まります。坂本龍馬の進言を受けた後藤象二郎の大政奉還論に共鳴し、参政として薩土盟約の締結に加わりました。寺村は和平路線を貫き、薩土盟約書の成文化を担当し、大政奉還を推進しました。

乾退助の失脚と大政奉還建白

寺村は小八木政躬らと謀り、大政奉還に反対する乾退助を失脚させ、藩内の討幕派の動きを封じ込めました。そして、山内容堂らと連名で大政奉還建白書を提出。徳川慶喜による大政奉還へと繋がりました。

失脚と晩年

鳥羽・伏見の戦い後、土佐藩が討幕へと方針転換したことで、寺村は失脚。明治元年（1868年）には士族の身分を剥奪され、追放処分となります。明治3年（1870年）に赦免され帰参を許されましたが、廃藩置県後は山内豊範の家令を務め、のちに華族会館の理事や民間の事業に関わりました。明治19年（1886年）には日本鉄道会社の理事委員となっています。晩年は不遇でしたが、明治29年（1896年）に亡くなる直前に従五位に叙せられました。

人物

寺村道成は、幕末の土佐藩において、山内容堂の側近として重要な役割を果たしました。薩土盟約の締結や大政奉還の推進に尽力する一方で、討幕派との対立や藩内での権力闘争に巻き込まれ、波乱に満ちた生涯を送りました。

家族

実父：寺村成相（主殿）
養父：寺村成壽（宇平）
本人：寺村道成（日野春草）
長男：日野成潔
長男の嫁：日野成雄の長女（母は板垣退助の姉・勝子）
長男の嫁の弟：日野成文（次郎三） - 土陽新聞理事
長男の嫁の妹：山田平左衛門の妻・信子（のぶこ）
次男：日野董助
義叔父(養父の弟)：日野成雄（軍馬）

史料

寺村の政治活動を記した『寺村左膳手記』『寺村左膳道成日記』は、幕末の土佐藩を知る上で貴重な史料となっています。

栄典

1896年（明治29年）7月15日 - 従五位

参考文献

『寺村左膳手記』
『寺村左膳道成日記』
『明治維新人名辞典』（日本歴史学会編、吉川弘文館、1981年）
『幕末維新人名事典』（新人物往来社、1994年）
『明治維新の言語と史料』（青山忠正、清文堂出版、2006年）
『高知教会百年史』高知教会百年史編纂委員会編、1985年

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