寺田臨川

寺田臨川（てらだ りんせん）

寺田臨川（1678年 - 1744年）は、江戸時代中期の儒学者であり、安芸国広島藩（現在の広島県）に仕えました。本姓は源氏、通称は立革、半蔵、諱は高通、字は鳳翼、士豹と称しました。

生涯

延宝6年（1678年）7月8日、広島城下で医師である寺田正茂の子として誕生しました。幼少の頃から学問に励み、貞享2年（1685年）に読書を始め、元禄2年（1689年）には味木立軒に入門し、儒学の基礎を築きました。元禄5年（1692年）には江戸に遊学し、さらに学識を深めました。

宝永元年（1704年）1月、広島藩主浅野綱長に「記室」として仕官しました。宝永2年（1705年）には江戸で林鳳岡に入門し、儒学の研究に没頭しました。宝永5年（1708年）6月には再び江戸へ赴き、浅野吉長の侍講として仕え、藩主の教育に貢献しました。正徳5年（1711年）9月、吉長に従い帰国の途中、大坂で朝鮮通信使の李東郭らと交流し、その名声を高めました。

享保10年（1725年）には、藩校である講学所（現在の修道中学校・修道高等学校）が設立され、その教授に任命されました。教育者として多くの人材育成に尽力し、享保19年（1734年）12月、講学所が講学館に改称された際には、「講学館学規三則」を定め、教育の質を高めるための指針を示しました。元文4年（1739年）11月15日、厳島神社の鳥居再建に際し、藩主に代わって「厳島神廟蔵華表記文」を撰し、奉納しました。

寛保3年（1743年）10月に講学館が廃止されると、12月には老齢を理由に致仕し、延享元年（1744年）11月24日に67歳で死去しました。墓所は竜華樹院國前寺にあり、昭和53年（1977年）には生誕300年を記念して改葬されました。

経歴

宝永元年（1704年）1月21日または22日：「記室」、30石3人扶持
正徳3年（1713年）9月21日：150石
享保8年（1723年）5月19日：月次講釈拝命
享保10年（1725年）11月4日：講学所教授
享保20年（1735年）6月18日：200石
寛保3年（1743年）12月26日：致仕

著作

『韓客唱酬筆語』: 正徳元年（1711年）に朝鮮通信使から受けた筆語原本を貼り混ぜたもの。寺田家に現存。
『広陵問槎録』: 朝鮮通信使との交流の記録。正徳2年（1712年）10月以降に刊行。
『諸士系譜』: 正徳4年（1714年）春に藩主吉長の命で編纂が開始され、享保8年（1723年）に完成し、厳島神社に奉納されました。享保12年（1727年）には『三次諸士系譜』の編纂も命じられ、享保16年（1731年）9月26日に奉納されました。
『二孝伝』: 元文元年（1736年）3月に刊行。安芸国山県郡戸河内村の八十郎と、備後国世羅郡甲山村の阿姫という2名の孝行を称えた書物です。
『芸備古城志』
『臨川全集』: 寛保2年（1742年）4月12日に厳島神社に奉納され、寛保3年（1743年）5月には藩主吉長に師である味木立軒の『覆載遺稿』と共に献上されました。
『寺田伝家訓』: 寛保3年（1743年）1月に成立。子である文次郎のために守るべき家訓と家宝を記したもので、寺田家に代々伝えられました。戦後、満洲からの引き揚げの際には、文書の持ち出しが禁じられる中、茶器の包装紙にして持ち帰ったという逸話が残っています。

寺田家

寺田家の遠祖は近江源氏佐々木氏であり、曾祖父の寺田五郎右衛門権祐は近江国寺田に住み、蒔田氏に仕えたとされています。

寺田勘平吉次 - 和歌山藩主浅野長晟に仕え、広島藩への転封に従い広島に移りました。
寺田正茂見次 - 吉次の三男。号は林庵。初め武道を志しましたが、病のため断念し、堀杏庵に医術を学びました。
寺田半蔵高通（寺田臨川）
寺田文次郎高年 - 大小姓、奥詰。
寺田源蔵高忠 - 代官、京都役人、町奉行。
寺田他人助高徳 - 後に稲蔵。病弱の父内蔵高章に代わり、文政2年5月に祖父より家督を継ぎました。大目付、広島藩少参事を務めました。
寺田清十郎 - 郡政権大属、藩庁少属（農務）。明治22年に死去しました。
寺田竜見 - 清十郎の子。早逝。
寺田新 - 清十郎の外孫。若くして死去。
寺田正 - 新の弟。戦前満州に赴任。
寺田保

家族

父：寺田正茂（寛永7年（1630年）3月6日 - 元禄14年（1701年）8月21日）
母（? - 天和元年（1681年））
先妻：益（元禄9年（1696年） - 享保3年（1718年）閏10月20日） - 永原氏。正徳4年（1714年）6月婚姻。
男子：万三郎（享保元年（1716年）8月26日 - 享保3年（1718年）4月7日）
後妻（? - 寛延元年（1748年）8月15日） - 古高氏。享保5年（1720年）2月婚姻。
女子：松（享保6年（1721年）5月30日 - 享保20年（1735年）9月1日）
男子：守之助（享保8年（1723年）6月9日 - 享保9年（1724年）1月28日）
養子：寺田高年（正徳元年（1711年） - 明和5年（1768年）6月10日） - 植木三郎右衛門一久の子。号は桂巌、通称は文次郎、字は士渙。元文3年（1738年）2月5日、永原氏の文（後、幾）と婚姻。臨川の致仕後、家督を継ぎ、200石で諸士隊。堀南湖に学びました。

関連項目

修道中学校・修道高等学校
修道中学校・修道高等学校の人物一覧

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