蒔田氏

蒔田氏：武家から華族へ

蒔田氏は、戦国時代から明治維新にかけて存在した日本の氏族です。そのルーツは、藤原氏の流れを汲む蒔田維昌が陸奥国蒔田城に居住し、蒔田を称したことに始まると伝えられています。

歴史

蒔田氏が歴史の表舞台に登場するのは、蒔田広貞が豊臣秀吉に仕え、1万石を与えられた時です。広貞は小大名として豊臣政権を支えましたが、慶長5年（1600年）の関ヶ原の戦いでは西軍に属したため、戦後に所領を没収されてしまいます。

しかし、その後、広貞は備中浅尾において再び1万石を与えられ、大名として復帰を果たします。ところが、寛永13年（1636年）に定正が弟の長広に3000石を、寛永18年（1641年）には定行が弟の定成に1300石を分与したことで、蒔田氏は大名としての地位を失い、以後は7700石の旗本として幕末まで存続することになります。

幕末、最後の藩主となった広孝は、文久3年（1863年）に江戸市中警備での功績が認められ、1万石の大名として返り咲きました。広孝は京都見廻組を取り仕切る見廻役を務め、佐幕派として活動しましたが、王政復古後は尊皇派に転じ、新政府に恭順。旧幕府勢力の一員であった備中松山藩攻撃にも参加しています。

明治2年（1869年）の版籍奉還により、広孝は浅尾藩知事に任じられ、明治4年（1871年）の廃藩置県までその職を務めました。

明治維新後、公家と大名家が統合される形で華族制度が誕生すると、蒔田家も大名家として華族に列せられました。明治17年（1884年）の華族令施行により華族が五爵制となると、広孝は旧小藩知事として子爵に叙せられました。広孝はその後、浅尾村長、総社町長を歴任し、地方行政に貢献しました。

広孝の養子となり爵位を継承した広城は、小田原急行鉄道や企業建築興行などの重役を歴任した後、貴族院の子爵議員に当選し、国政にも参与しました。広城の代には、蒔田子爵家の邸宅が東京市淀橋区西大久保に構えられていました。

蒔田邸の変遷

神田錦町にあった蒔田氏の屋敷は、維新後に山階宮晃親王邸となりました。その後、三菱が買収し、三菱商業学校（後に明治義塾と改称）の校地として利用されました。明治義塾が経営不振で廃校となった後は、英吉利法律学校（現在の中央大学）が校地として使用し、さらに1926年（大正15年）には電機学校（現在の東京電機大学）がその地に移転しました。

このように、蒔田氏の邸宅は、時代とともに所有者や用途を変えながら、その場所で歴史を刻み続けています。

参考文献

浅見雅男『華族誕生 名誉と体面の明治』リブロポート、1994年
小田部雄次『華族 近代日本貴族の虚像と実像』中央公論新社、2006年
華族大鑑刊行会『華族大鑑』日本図書センター、1990年
新田完三『内閣文庫蔵諸侯年表』東京堂出版、1984年

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