専光房良暹

専光房良暹（せんこうぼう りょうせん）

専光房良暹は、平安時代末期から鎌倉時代初期にかけて活躍した僧侶です。専光坊良暹とも表記されます。彼は伊豆山走湯権現（現在の伊豆山神社）の僧侶であり、源頼朝の師僧として知られています。

源頼朝との関係

専光房良暹は、源頼朝が鎌倉に入る以前から師檀の関係にありました。頼朝が鎌倉に入ると、彼は頼朝に招かれ、鶴岡八幡宮の臨時別当を務めることになります。この時期、頼朝は祖先からの八幡宮を祀るため、鶴岡八幡宮を小林郷の北山に移築しており、専光房良暹がその運営を担いました。

また、専光房良暹は、頼朝の守り本尊である正観音像の発見にも関わっています。弟子の僧が、しとどの窟に隠されていた像を見つけ出し、頼朝のもとに届けたのです。さらに、鶴岡八幡宮境内の源平池の造営にも責任者として携わり、北条政子の安産祈願では、頼朝の命で大法師観修とともに祈祷を行いました。

奥州征伐の際には、頼朝から戦勝祈願を託され、鎌倉で祈祷を行っています。また、頼朝の夢のお告げにより、観音堂を建立したとされています。この観音堂は、頼朝が出陣してから20日後に建てるという約束でしたが、夢のお告げがあったため、約束よりも早く建てられたとされています。この日は、奥州藤原氏との最初の戦いである阿津賀志山の戦いが始まった日であり、『吾妻鏡』には「なんとも不思議な出来事である」と記されています。

熊谷直実の出家を巡る出来事

建久3年（1192年）には、熊谷直実が出家のため伊豆山走湯権現へ向かいました。これを知った頼朝は、専光房良暹に熊谷直実を思いとどまらせるよう命じます。専光房は、出家を思いとどまらせようとしますが、最終的には彼の決意は固く、仏道に専念する意思を鎌倉に報告しました。

梶原景実としての側面

専光房良暹は、梶原景時の兄である梶原景実であるという説も存在します。この説によれば、専光房は、梶原専光坊僧正景実とされ、伊豆山走湯権現の僧侶として、箱根権現別当行実の弟子であったとされています。晩年には、梶原神社と早馬神社を創建したと伝えられています。これらの神社には、鎌倉初期の懸仏が祀られています。

また、建保5年（1217年）には、源頼朝の死去、梶原一族の没落、畠山氏や和田氏の滅亡を見て世を憂い、鎌倉を離れ、石浜（現在の宮城県気仙沼市唐桑町）にたどり着き、梶原神社を建立したとされています。その後、猶子とした梶原景茂（景時の三男）の子である大和守景永と共に、早馬山頂に早馬神社を建立し、現在もその直系の子孫が宮司を務めています。

同名の僧侶について

同時代には、智蔵坊良暹という同名の僧侶も存在しています。この二人が同一人物であるかどうかは、はっきりしていませんが、辞典類では同一人物として扱われることもあります。

参考文献

『吾妻鏡』
田辺希文 著「本吉郡」、鈴木省三 編『封内風土記 巻之十四』仙台叢書出版協会〈仙台叢書封内風土記 三〉、1893年（原著1772年）。
保田光則『新撰陸奥風土記』歴史図書社、1980年（原著1860年）。
佐久間洞巖『奥羽観蹟聞老志 巻之九 気仙郡』宮城県、1883年。
伊勢斉助『奥羽観蹟聞老志 補修篇 巻之九 本吉郡』仙台叢書刊行会〈仙台叢書 第十六巻〉、1929年。
『宮城県神社名鑑』宮城県神社庁、1976年。
梶原等『梶原景時：知られざる鎌倉本体の武士』新人物往来社、2004年。

外部リンク

早馬神社（公式ウェブサイト)

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