早馬神社

早馬神社

早馬神社は、宮城県気仙沼市唐桑町に位置する由緒ある神社です。この神社は、鎌倉幕府の御家人であった梶原景時の兄、梶原景実（専光房良暹）によって創建されました。

歴史

創建当初は、早馬大権現、早馬権現、早馬権現社、早馬山権現など、様々な名前で呼ばれていました。唐桑半島の鎮守として、地域の人々から深く信仰され、「早馬さま」「権現様」という愛称で親しまれています。

早馬神社は、里宮と奥宮の二つから構成されています。里宮・拝殿は唐桑町宿浦にあり、奥宮・社殿は早馬山の山頂に鎮座しています。

初代の梶原景実が鎌倉を離れる前、源頼朝の命により北条政子の安産祈願を行ったところ、無事に男子（源頼家）が生まれたという逸話があります。このことから、古くから安産や子育てにご利益がある神社として知られています。

参道には、樹高20メートルを超える2本の巨大な杉の木がそびえ立っています。これらの杉は樹齢数百年と伝えられ、神社の歴史を物語る存在です。かつては「上二本杉」と呼ばれる杉もありましたが、1999年の強風で亀裂が入り、倒木を防ぐために伐採されました。また、別の老杉も存在していましたが、明治元年に伐採されたと伝えられています。

祭神

早馬神社の祭神は、倉稲魂命です。唐桑は漁業の町として知られていますが、ハヤマ信仰が見られるのは珍しいとされています。また、ハヤマ神社が村の氏神となっているのも珍しいケースだと言われています。

創建の経緯

建保5年（1217年）、鶴岡八幡宮の臨時別当であった梶原景実は、源頼朝の死や、梶原一族の没落、和田氏、畠山氏の滅亡といった出来事を見て、世を憂い鎌倉を離れました。その後、蝦夷千島を目指し、藤原高衡ゆかりの地である石浜（気仙沼市唐桑町）にたどり着きました。景実は、この地に社を建て、源頼朝、梶原景時、梶原景季の御影を安置し、一族の冥福を祈り梶原神社を建立しました。

その2年後、梶原景茂（景時の三男）の子である大和守景永が、景実を訪ねてこの地にやってきました。景永は景実の猶子となり、神職に就きました。そして景実と共に早馬山頂に早馬神社を建立し、以来、梶原氏の直系子孫が宮司を務めています。別当は良厳院が務めています。

石浜にあった里宮は、慶長16年（1611年）の慶長三陸津波によって流され、明戸地区に一時的に移されましたが、その後現在の宿浦に遷座しました。

東日本大震災

2011年（平成23年）3月11日に発生した東日本大震災では、津波により宿地区一帯が壊滅的な被害を受けました。高台にある早馬神社にも津波が到達し、神輿が海水で汚損してしまいました。通常、海難死があった際には1週間ほどで執り行われるウラバライは、港湾の地盤沈下や犠牲者の多さ、被災者の心情などを考慮し、震災から百か日となる6月19日に執り行われました。また、9月の例大祭は、ルートや手順を変更して実施されました。

2012年（平成24年）9月には、神社境内に東日本大震災復興祈願碑が建立されました。

2015年（平成27年）には、東日本大震災の被災地を巡礼地として形成された「東北お遍路プロジェクト」の巡礼ポイントに選定されています。

祭事・行事

早馬神社では、年間を通して様々な祭事や行事が行われています。

3月：浦祭（ウラマツリ・ハママツリ） - 漁業の安全と大漁を願う祭りで、かつてカツオ漁が盛んだった頃、漁期が始まる際に行われていた行事が起源とされています。
9月19日：例祭（フナマツリ） - 航海の安全と大漁を祈願する祭りで、神輿の海上渡御や潮垢離が行われます。かつては7年に一度の神輿降臨でした。
10月第1日曜日：神幸祭・唐桑早馬カキ祭 - 神輿渡御や船祭りが行われ、カキ祭では地元産のカキが振る舞われます。
海難などの異状死発生時：浜祓い（ウラバライ・ハマバライ） - 浜に供物を捧げる儀式が行われます。唐桑では、このような不時に、浜に穢れを残した状態で漁をすることは禁忌とされています。

現地情報

里宮

宮城県気仙沼市唐桑町宿浦75

周辺には、宿浦港や唐桑城址（唐桑舘）、県の天然記念物である下二本杉（夫婦杉）などがあります。

奥宮

宮城県気仙沼市唐桑町鮪立

周辺には、早馬山展望台や漁火パークなどがあります。

早馬神社は、歴史と自然に囲まれた、地域の人々の心の拠り所となる神社です。その存在は、東日本大震災からの復興の象徴としても、重要な意味を持っています。

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