専称寺 (神戸市)

専称寺：歴史と変遷を刻む神戸の寺院

専称寺は、兵庫県神戸市中央区に鎮座する浄土真宗本願寺派の寺院です。正式名称は正立山専称寺といい、その歴史は慶長13年（1608年）、僧・祐性によって大阪で開山されたことに始まります。当初は大阪にありましたが、大坂冬の陣と大坂夏の陣の戦火によって焼失、再建を繰り返しながら、幾多の変遷を経て現在の地へと至っています。

激動の時代を生き抜く

開山以来、専称寺は数々の歴史的事件に深く関わってきました。特に注目すべきは、文久3年（1863年）からの勝海舟との関わりです。勝海舟は専称寺を寓居とし、私塾「大坂海軍塾」を開設しました。坂本龍馬をはじめ、多くの志士たちが集い、活気溢れる学びの場となりました。この海軍塾は、後の江戸城無血開城に繋がる重要な役割を果たしたと言われています。

また、明治11年（1878年）には、五代友厚が大阪商法会議所設立に向けた会議を専称寺で開催するなど、経済活動の拠点としての役割も担っていました。その後、大阪への移転を経て、明治33年（1900年）に神戸市に移転。この地で、専称寺は地域の重要な拠点となっていきました。

神戸水平社の創立と地域社会への貢献

大正11年（1922年）には、画期的な出来事が起こりました。専称寺で、兵庫県初の水平社である神戸水平社の創立総会が開催されたのです。県内外から500名以上が参加した盛大な会合は、当時の社会状況を反映し、大きな反響を呼びました。この出来事は、専称寺が地域社会の平等と解放に貢献した重要な歴史的出来事と言えます。

戦災と震災を乗り越えて

昭和20年（1945年）の神戸大空襲では、専称寺は本堂や庫裡を焼失するという大きな被害を受けました。勝海舟や坂本龍馬ゆかりの貴重な資料も失われたことは、痛恨の極みです。戦後、現在の地に移転し、新たな歴史を刻んできましたが、1995年の阪神・淡路大震災でも山門や塀に被害を受けました。

現代への継承

幾度もの災害や移転を経験しながらも、専称寺は人々の信仰の場として、そして地域社会の重要な拠点としてその役割を果たし続けてきました。勝海舟や坂本龍馬、神戸水平社といった歴史的出来事と深く関わる専称寺の歴史は、現代社会に生きる私たちにとって、貴重な教訓と勇気を与えてくれるものと言えるでしょう。その歴史と現在を繋ぎ、未来へと受け継いでいくことが、私たちに課せられた使命と言えるのではないでしょうか。

周辺環境

専称寺周辺には、葺合警察署、葺合消防署、大安亭市場、阪神春日野道駅などがあり、生活に密着した環境にあります。

関連項目

神戸海軍操練所
神戸市のスラム問題

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