尊性法親王 (鎌倉時代)

尊性法親王：鎌倉時代の皇族僧侶

尊性法親王（そんしょうほっしんのう）は、鎌倉時代に生きた皇族であり、僧侶です。後高倉院の第一皇子として生まれ、後堀河天皇の同母兄にあたります。通称は綾小路宮と呼ばれました。

生涯

1194年に生まれた尊性法親王は、1209年に出家し、妙法院に入りました。その後、権大僧都にまで昇りつめます。1221年には弟である後堀河天皇の即位に伴い、親王宣下を受け、二品親王となりました。実全から譲り受けた綾小路房を御所としました。

1225年、四天王寺別当であった慈円が亡くなると、後継を巡って延暦寺と園城寺が対立しました。しかし、後堀河天皇は両者の要求を退け、尊性法親王を後任に任命しました。さらに、1227年には天台座主にも補任されています。

1229年、六波羅探題と延暦寺の僧兵が衝突する事件が起こります。尊性法親王は事態の収拾に尽力しますが、僧兵を抑えることができず、辞任に至りました。その後、後任を巡る騒動が起こり、最終的に良快が座主に任命されました。

四天王寺の僧侶たちが尊性法親王の排除を図る事件や、仏舎利を奪おうとする事件も発生し、寺内の混乱が続きました。藤原定家の日記『明月記』にも、この騒動が詳しく記録されています。最終的に、尊性法親王は四天王寺別当の地位を良快に譲ることになりました。

しかし、1232年には天台座主に復帰、翌年には四天王寺別当にも再任しています。尊性法親王は、後堀河天皇の兄という立場を利用し、幕府や六波羅探題との関係を深め、自身の立場を有利にするための政治工作を行いました。特に、妙法院の立て直しに尽力し、同院を天台宗の有力な門跡に育て上げました。

尊性法親王が後堀河天皇に宛てた自筆書状は、法親王の死後、法華経の摺り写しの裏紙として利用され、紙背文書として現存しています。また、琵琶の名手としても知られていました。

1238年に天台座主を退き、1239年に46歳で亡くなりました。

尊性法親王と政治

尊性法親王は、単なる僧侶ではなく、政治的な影響力を持つ人物でした。後堀河天皇の兄という立場に加え、幕府や六波羅探題との関係を利用し、自らの勢力を拡大しました。また、寺社勢力との複雑な関係の中で、巧みに立ち回り、自らの地位を確立しました。藤原定家は、尊性法親王を「兵を好む」と評しており、武力も持っていたと考えられています。

尊性法親王の生涯は、鎌倉時代の朝廷と幕府の関係、寺社勢力の動向を理解する上で、重要な手がかりとなります。

参考文献

上田正昭他『日本人名大辞典』講談社、2001年。
三好不二雄「尊性法親王」『日本人名大事典』第3巻、平凡社、1979年。
市古貞次『国書人名辞典 3』岩波書店、1996年。
高橋慎一朗「尊性法親王と寺社紛争」（『日本中世の権力と寺院』吉川弘文館、2016年 所収）
* 曽我部愛「承久の乱後の王家と法親王」（『中世王家の政治と構造』同成社、2021年 所収）

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