小坂森林鉄道

小坂森林鉄道とは

小坂森林鉄道は、岐阜県益田郡小坂町（現在の岐阜県下呂市）の小坂川とその支流沿いに路線を持っていた森林鉄道です。軌間は762mmで、名古屋営林局小坂営林署が運営していました。小坂停車場では高山本線飛騨小坂駅と接続し、木材の積み替えが行われていました。旧小坂町は、御嶽山から続く広大な森林を有し、町面積の97%が山林であり、その6割を国有林が占めていました。そのため、各地で営林署の統廃合が進む中でも、末期まで1町1営林署を維持していました。

また、付知川の上流、加子母川、小坂川の上流一帯は裏木曽と呼ばれ、御料林（裏木曽御料林）や神宮備林がありました。これらの地域から産出される木材を効率的に輸送するために、森林鉄道が重要な役割を果たしました。

主な路線

小坂森林鉄道の主な路線は以下の通りです。それぞれの線名は、沿線の川の名前から命名されています。

小坂線
本線：大島貯木場（小坂停車場） - 落合停車場 - 下島停車場（8117m）
小黒川支線：下島停車場 - 小黒川線起点（372m）
小黒川線：小黒川線起点 - 区間班29号 - 区間班38号（小黒川停車場）（9868m）
若栃線
落合停車場 - 若栃積木場（若栃停車場） - 151林班（11051m）
鹿山線
大洞停車場 - 下呂俣 - 180林班（11051m）
椹谷線
下島停車場 - 椹谷区画班82号（椹谷終点）（8713m）
濁河線
下部軌道：追分 - 倉ヶ平停車場（1833m）
上部軌道：岳見台停車場 - 区画班62（濁河停車場）（8688m）
濁川索道：倉ヶ平停車場 - 岳見台停車場（348m）
浜衛谷線
倉ヶ平停車場 - 96林班（2000m）
唐谷線
唐谷線分岐点 - 132林班（3189m）

この他にも、作業軌道が数本存在していました。

車両

小坂森林鉄道で使用された機関車の多くは、ガソリンエンジンを内燃機関とするガソリン機関車でした。一部の機関車はディーゼルエンジンに換装されていました。車両はプリマス・ロコモティブ・ワークスの機関車の仕様で製作された国産メーカーのものが多く、DLB、FLHのモデルが存在しました。仕様は様々で、重量は4.0から6t、出力は42から75馬力でした。製造メーカーは加藤製作所、酒井工作所、岩崎レール商会などがありました。

歴史

小坂森林鉄道の主な歴史は以下の通りです。

1928年（昭和3年）：小黒川線が開通。
1933年（昭和8年）：小坂線が開通。
1934年（昭和9年）：若栃線の一部（落合停車場 - 若栃積木場）が開通。
1935年（昭和10年）：鹿山線の一部（大洞停車場 - 下呂俣）が開通。
1939年（昭和14年）：椹谷線が開通。
1940年（昭和15年）：濁河線の索道が開通。
1941年（昭和16年）：濁河線の下部軌道、上部軌道が開通。
1952年（昭和27年）：若栃線が全通。この頃の車両数は、機関車13両、貨車406両、モーターカー3両でした。
1953年（昭和28年）：唐谷線、鹿山線が全通。椹谷線の一部を廃止。
1956年（昭和31年）：この時点の路線の長さは63,604mでした。
1962年（昭和37年）：小坂線、椹谷線、唐谷線が廃止。
1963年（昭和38年）：小黒川線、若栃線、濁河線の一部（索道、下部軌道）が廃止。この頃の車両数は、機関車2両、貨車70両、モーターカー1両でした。
1964年（昭和39年）：鹿山線が廃止。
1971年（昭和46年）：濁河線（上部軌道）が廃止。これにより小坂森林鉄道は全線廃止となりました。

接続路線

小坂停車場では、高山本線飛騨小坂駅と接続していました。

その他

北恵那鉄道線下付知駅から付知川とその支流沿いに存在した付知森林[[鉄道]]は、小坂森林鉄道と同じ裏木曽の木材運搬を担っていました。小坂森林鉄道は裏木曽の西側からの路線であり、付知森林[[鉄道]]は南側からの路線でした。

道路が十分に整備されていなかった時代、沿線住民にとっては貴重な物資運搬手段でした。住民は自前の小型トロッコを使い、森林鉄道の線路で物資を運んだり、路盤を歩道代わりに利用したりしていました。

現在

廃止後、機関車(ガソリンカー)が濁河温泉に屋外展示されたこともありましたが、メンテナンス不足により腐食が進行し撤去されました。また、かつて国道41号線沿いの宮峠付近にあったドライブイン前にも、黄色い機関車を先頭に木材を積んだ貨車と客車がトロッコ列車風に3両屋外展示されていましたが、ドライブインの閉店と共に撤去されました。

現在、飛騨小坂駅周辺には、飛騨川橋梁の跡など、かつての小坂森林鉄道の痕跡が数多く残っています。小黒川線は岐阜県道441号落合飛騨小坂停車場線の一部（通称：鈴蘭スカイライン）になっています。また、小坂川に沿って湯屋温泉の対岸までの区間は舗装され「飛騨小坂サイクリングロード」として利用されています。

さらに、小坂駅と鹿山間には、ほぼ沿うように濃飛バス下呂湯屋線が運行されています。2014年には、地元住民らによって小坂森林鉄道研究会が発足し、小坂森林鉄道の記憶と記録を残す活動を行っています。森林鉄道の車両の収集も行われており、2009年には尾張旭市の城山公園に展示されていた酒井工作所の4t機関車、2019年には野辺山SLランドから酒井工作所の5t機関車、2021年3月には国土交通省立山砂防工事専用軌道の5t機関車が譲渡され、ひめしゃがの湯に保存されています。将来的には、これらの車両を使い、路線跡を観光資源として活用することが検討されています。

参考文献

坂中真之「小坂森林鉄道　上巻　飛騨最大の森の鉄路」、ブイツーソリューション、2019年。
坂中真之「小坂森林鉄道　下巻　飛騨最大の森の鉄路」、ブイツーソリューション、2020年。

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