小山 (相模原市)

小山地区：歴史と変貌を遂げる相模原の街

神奈川県相模原市中央区に位置する小山地区は、JR横浜線沿線に広がる地域で、歴史と近代が交錯する独特の景観を持っています。かつては相模原台地の広大な桑畑が広がり、静かな農村地帯でしたが、陸軍の兵器製造所建設を契機に、大きくその姿を変えてきました。本稿では、小山地区の地理的特徴、歴史、そして現在の様子を詳細に解説します。

地理的特徴：境川と相模原台地の織りなす風景

小山地区は、北を境川、南を相模原台地が縁取る地域です。境川はかつて蛇行が激しく、洪水被害に悩まされていましたが、河川改修によって流路が直線化されました。その結果、現在では都県境を挟んで、神奈川県相模原市と東京都町田市が入り組んだ飛び地状の地形となっています。

境川の低地と相模原台地の間には段丘崖があり、約10～20mの比高差があります。古くからの集落は、この段丘崖周辺に点在しており、「宮上（ミヤカミ）」と「宮下（ミヤシモ）」と呼ばれていました。さらに、境川の対岸である町田市小山町は「日向小山」、小山地区は「日陰小山」と呼ばれて区別されていました。

相模原台地は、かつて桑畑が広がる農地でしたが、昭和13年（1938年）の相模兵器製造所（後の相模総合補給廠）建設以降、大規模な区画整理が行われ、工業団地や住宅地へと変貌を遂げていきました。特に朝鮮戦争後は米軍の接収を経て、関連工場の進出が相次ぎ、現在では宮下工業団地をはじめとする工業地帯が形成されています。

一方、境川沿いの低地は、1990年代以降の京王相模原線多摩境駅開業を機に宅地化が進み、農地は急速に減少しています。このエリアは、台地上とは異なり、個々の農地の区画に沿った開発が進んだため、狭く複雑な街路網が形成されているのが特徴です。

歴史：小山氏の拠点から近代工業都市へ

江戸時代初期までは相模国高座郡相原村の一部でしたが、中世には横山党小山氏の本拠地であったと伝えられています。地名「小山」の由来は、この小山氏に遡ります。1594年（文禄3年）の検地で境川が相模国と武蔵国の境界と確定したことにより、武蔵国側も「小山」という地名を持つようになりました（現在の町田市小山町）。

相模原台地は、水資源が乏しく開発が遅れ、周辺農村の共同利用地として利用されていました。しかし、1843年（天保14年）に原清兵衛による新田開発が始まり、1856年（安政3年）には清兵衛新田が成立しました。

明治時代以降は、生糸輸出の隆盛に伴い養蚕が盛んになり、台地一帯は桑畑へと変わりました。1889年（明治22年）の町村制施行で小山村は橋本村、相原村、清兵衛新田と合併して相原村となり、1954年（昭和29年）に相模原市の一部となりました。

1964年（昭和39年）から順次住居表示が実施され、現在では大字小山の大部分は住居表示された町名に変わっています。相模原市の政令指定都市移行（2010年）に伴い、小山地区の一部は中央区、一部は緑区に属することになりました。

小山地区の現状：住宅地と工業団地の共存

現在、小山地区は住宅地と工業団地が混在する地域です。JR横浜線沿いの工場用地には、デュプロや横河電機といった企業が進出しています。また、住宅地には小山小学校、小山中学校などの教育施設があり、地域住民の生活を支えています。

2023年1月1日現在の公示地価は、住宅地で17万6000円/m2と、相模原市内の平均的な水準です。人口は、2020年10月1日現在の国勢調査では、詳細な数値は秘匿されています。

まとめ：歴史と発展の調和

小山地区は、歴史的な背景と近代的な開発が複雑に絡み合った地域です。かつての農村地帯から、工業都市へと変貌を遂げながら、現在も発展を続けています。古くからの集落の面影を残しながらも、新たな産業や住宅地が形成され、多様な人々が暮らす活気ある地域となっています。今後も、歴史と現代が調和した街づくりが期待されます。

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