小山田昌成

小山田 昌成（おやまだ まさなり）は、戦国時代に甲斐国の武田氏に仕えた武将です。武田家の譜代家老衆に列せられていました。諱については、「昌成」が確実な史料で確認できる実名ですが、「昌行」や「昌重」とする伝承も存在します。

昌成の父は小山田虎満（こやまだ とらみつ）です。虎満は初代備中守を称し、また上原伊賀守とも名乗り、出家後は玄怡（げんい）と称しました。一説には昌辰ともいわれています。虎満は武田晴信（信玄）の代からの譜代家臣として活躍し、特に信濃侵攻で功を挙げました。天文九年（一五四〇年）には、信濃佐久郡内山城（現在の長野県佐久市）の城代に任じられ、甲斐郡内領主の小山田氏とは別系統にあたる石田小山田氏の名跡を継承し、「小山田備中守」を名乗るようになります。

昌成の家族としては、弟に大学助、子息に藤四郎がいたことが知られています。また、同時期の備中守系小山田氏には昌盛（六左衛門尉）という人物がおり、昌成の嫡子であるとも、あるいは弟であるとも考えられています。

父の虎満は、真田幸綱（幸隆）と共に武田氏の西上野侵攻に従軍していました。永禄七年（一五六四年）には、真田幸綱が武田信玄に報告したところによると、上野国衆の安中越前入道が、北信地域で敵対していた越後国の上杉輝虎に内通し、虎満が守る城（おそらく上野松井田城）に攻め込んできたといいます。これを受け、信玄は昌成を虎満のもとに派遣し、伝言を伝えさせました。

昌成自身が史料に初めて登場するのは永禄九年（一五六六年）の文書で、この時、信濃佐久郡に知行を与えられています。この時の宛名は「藤四郎」となっています。同年十月には、父虎満と共に上野松井田城の防衛を命じられており、この文書においては「菅右衛門尉」を名乗っています。このことから、この間に何らかの受領官位を得たと考えられます。

虎満は天正七年（一五七九年）に死去するまで内山城代を務めたことが確認されていますが、永禄十年（一五六七年）には、嫡男である菅右衛門尉（昌成）への知行や同心衆の譲渡が武田氏によって認められており、この頃に虎満は隠居していた可能性が指摘されています。昌成は後に二代目備中守を襲名しますが、高野山蓮華定院の過去帳によれば虎満は天正七年十月十二日に死去するまで備中守を称し続けていたため、昌成の二代目備中守襲名はこの虎満の死後であったと考えられます。

昌成の活動を示す文書は多くはありませんが、天正三年（一五七五年）からは、武田勝頼が発給する龍朱印状の奉者として四点が確認されています。また、同年に行われた長篠の戦いにも従軍し、五〇〇の兵を率いて戦いました。この戦いで武田軍が大敗し、敗走中に追撃してきた徳川方の武将、松平伊忠を見事に討ち取るという武功を挙げています。

武田勝頼の治世末期、天正十年（一五八二年）三月、織田信長・徳川家康による連合軍が武田領国である信濃への侵攻を開始します。これに対し、昌成は信濃伊那郡高遠城主である仁科盛信（武田勝頼の弟）の相備衆として救援に向かいました。昌成は高遠城において仁科盛信の副将となり、織田信長の嫡男である織田信忠率いる大軍に対して籠城戦を展開します。圧倒的な敵勢に対し、城兵と共に果敢に戦いましたが、奮戦空しく城は落とされ、昌成は仁科盛信や弟の大学助らと共に壮絶な討死を遂げました。この高遠城の戦いにおける玉砕は、武田氏の滅亡を決定づける戦いの一つとなりました。

小山田昌成は、父の代から武田家に仕えた譜代の臣として、その最期まで武田家に忠誠を尽くした武将と言えるでしょう。

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