小川笙船

小川笙船について

小川笙船（おがわ しょうせん）は、江戸時代中期に活躍した町医者、漢方医です。生年は寛文12年（1672年）で、彼の本名は弘治といいます。彼は、江戸幕府の設立した無料医療施設、小石川養生所の設立と運営に尽力したことで知られています。また、山本周五郎の小説『赤ひげ診療譚』の主人公である「赤ひげ先生」こと新出去定のモデルともされていることから、医療に対する彼の功績は後世にも影響を与えています。

生い立ちと初期の業績

小川笙船は、伊予国の戦国大名・小川祐忠の子孫として、江戸に生まれ育ちました。享保6年（1721年）の冬、江戸幕府の8代将軍・徳川吉宗が設置した目安箱に、彼は貧困層のための診療施設である施薬院の設立を求める意見を書き送りました。この意見は採用され、翌年には施薬院が設立されることになりました。笙船は、町奉行の中山時春と大岡忠相に意見を伝え、医療制度の改革に向けた活動を展開しました。

しかし、設立に向けた道のりは容易ではありませんでした。有馬氏倫が設立を担当しましたが、彼は笙船の提案を実現することが難しいと感じ、町の役人に事務を担当させて調査を行わせる形となりました。このような取り組みを経て、享保7年（1722年）には小石川養生所が小石川御薬園内に設立され、笙船はその初代肝煎に就任しました。

小石川養生所の運営

小石川養生所は、当初、庶民からの信頼を獲得することが難しく、患者は少なかったです。庶民たちは、養生所が幕府の薬園に位置していたため、薬草の実験台にされることを懸念していました。この状況を打破するため、大岡忠相は江戸の町名主たちに養生所を訪れてもらい、施設や業務を見学させました。この活動が功を奏し、患者数は徐々に増加しましたが、入所を希望する全ての患者を受け入れることができない事態にもなりました。

享保11年（1726年）には、笙船は息子の隆好に肝煎職を譲り、金沢（現在の横浜市金沢区）に移ります。その後、彼の子孫が養生所の肝煎職を世襲することになりましたが、小川笙船自身は病にかかり、再び江戸に戻ることになります。

人生の終焉

小川笙船は、宝暦10年（1760年）6月14日に病気のために亡くなりました。享年は89歳でした。彼は小石川の光岳寺に葬られ、後に太寧寺（現在の横浜市金沢区）に分骨された後、雑司ヶ谷霊園に改葬されています。

その功績は、江戸時代における医療の発展に寄与したものであり、貧困層への医療支援の必要性を強く訴えた彼の姿勢は、後の医療制度にも影響を与え続けています。

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