小式部内侍

小式部内侍:才能と恋、そして伝説の生涯



小式部内侍(こしきぶのないし)は、平安時代を代表する女流歌人です。999年頃生まれ、1025年11月に20代で夭逝しました。父は橘道貞、母はかの有名な和泉式部。母と共に一条天皇の中宮・彰子に仕えたことから、母との区別のため「小式部」と呼ばれました。

華麗なる恋と数々の高貴な男性

小式部内侍は、母譲りの恋多き女性としても知られています。藤原教通藤原頼宗、藤原範永、藤原定頼など、多くの高貴な男性との交際が記録に残されています。教通との間には静円を、範永との間には娘をもうけました。万寿2年、藤原公成の子を出産した際に若くして亡くなり、周囲に深い悲しみを与えました。この時の母の和泉式部による歌は、今もなお人々の心を打つ哀悼の傑作として知られています。

数々の説話集に彩られた生涯

小式部内侍の生涯は、『十訓抄』や『古今著聞集』などの説話集に数々の逸話として描かれています。中でも、大江山を舞台にした歌のエピソードや、藤原教通との恋物語は特に有名です。『無名草子』では、理想的な女性像として称賛されています。

鳥取での誕生と安産祈願

伝承によると、和泉式部は小式部内侍を妊娠中に郷里である因幡国湖山へ戻っていました。安産を祈願し、現在の鳥取市鹿野町鹿野にある住吉神社に17日間も参詣したと言われています。そして、小式部内侍は鹿野町水谷で生まれたとされています。神社の西には、産湯に使われた井戸が残されていると伝えられています。

天才的な歌の才能と、代作疑惑への見事な返答

小式部内侍は優れた歌の才能を持っていました。その才能は、有名な「大江山」の歌のエピソードに見ることができます。『金葉和歌集』と百人一首では若干の語順の違いがありますが、いずれも彼女の才能を如実に示しています。

当時、小式部内侍の歌は母が代作しているという噂がありました。歌合への参加を命じられた時、母は再婚相手である藤原保昌と共に丹後へ下っていました。この状況を面白がった四条中納言(藤原定頼)は、小式部内侍をからかいました。「母の代作を依頼する使いを出しましたか?使いは戻りましたか?」と。

しかし、小式部内侍は動じることなく、次の歌を即興で詠みました。

「大江山いく野の道も遠けれどまだ見ずなりぬ天の橋立」

この歌は、「行く野(いくの)」「生野(いくの)」、「文(ふみ)」「踏み(ふみ)」という巧みな掛詞を用いて、「大江山へ向かう道ですらまだ行ったことがない、ましてや母のいる天の橋立へは行ったことも手紙も見ていない」という意味です。

この機知に富んだ返歌に、四条中納言は狼狽し、返歌もできずに立ち去りました。この出来事によって、小式部内侍の歌人としての名声はさらに高まったと言われています。四条中納言自身も優れた歌人として小倉百人一首に選ばれていますが、この時ばかりは小式部内侍の機転と才能に圧倒されたと言えるでしょう。

まとめ

小式部内侍は、その才能と魅力的な人生によって、平安時代の文化に大きな足跡を残した女性です。数々の逸話や歌を通して、現代においてもなお、人々の心をつかんで離しません。彼女の生涯は、まさに平安時代を彩る、美しくも儚い物語と言えるでしょう。

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