藤原範永

藤原範永（ふじわら の のりなが）は、平安時代中期から後期にかけて活躍した貴族であり、歌人としても名を残しています。藤原北家長良流の出身で、内匠頭・藤原中清（なかきよ）を父に持ちます。官位は正四位下・摂津守にまで昇り、和歌六人党の一員として、当時の歌壇においても重要な役割を果たしました。

官僚としての足跡

範永は、後一条天皇の時代に六位蔵人に任じられたのを皮切りに、官僚としてのキャリアをスタートさせます。修理権亮、式部大丞を経て、寛仁3年（1019年）に従五位下に叙爵。翌年には甲斐権守に任ぜられました。その後も順調に昇進を重ね、治安3年（1023年）には春宮・敦良親王（後の後朱雀天皇）の春宮少進に就任。さらに伯耆守を兼任し、長元3年（1030年）には治国の功績により従五位上に昇叙しました。

長元9年（1036年）、敦良親王が後朱雀天皇として即位すると、範永は従四位下に昇進。翌年には尾張守として地方官に転じました。長久4年（1043年）には安福殿造営の功により従四位上に叙せられています。後冷泉天皇の時代に入ると、寛徳2年（1045年）に大膳大夫として京官に復帰。天喜元年（1053年）には但馬守、康平5年（1062年）には阿波守、康平8年（1065年）には摂津守と、受領としてのキャリアを重ねました。この間、天喜4年（1056年）には正四位下に至ります。また、康平4年（1061年）には太政大臣・藤原頼通の七十賀にも参会しています。

範永は、延久2年（1070年）頃に出家し、津入道と号しました。

歌人としての才能

範永は、受領層の歌人集団である和歌六人党の中心的な存在でした。相模、能因、橘俊綱といった多くの歌人たちと交流し、歌壇を牽引しました。長久2年（1041年）の『弘徽殿女御歌合』、永承5年（1050年）の『加賀院歌合』、天喜4年（1056年）の『皇后宮寛子春秋歌合』など、数々の歌合に参加。康平6年（1063年）の『公基朝臣歌合』では判者を務めました。

彼の作品は、『後拾遺和歌集』に14首、その他の勅撰和歌集にも計30首が収録されています。また、家集として『範永朝臣集』が残されています。これらの作品を通して、範永の豊かな歌才を垣間見ることができます。

系譜と子孫

範永の父は藤原中清、母は藤原永頼の娘です。正室には藤原能通の娘を迎えました。彼の子である藤原良綱は、高倉家、堀河家、樋口家といった堂上家の祖となり、その血筋は後世にも繁栄しました。その他、藤原清家、小式部内侍を妻とした子、藤原頼宗家女房（尾張）となった娘がいます。また、生母不明の子女として、藤原永綱、季仲、永賀、右衛門佐藤原知綱母、藤原公基室、藤原忠綱室となった娘たちがいます。

範永は、その生涯を通じて、官僚として、また歌人として、平安時代の文化を彩った人物であり、その功績は今もなお語り継がれています。

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