小書 (能楽)

小書（こがき）について

小書（こがき）は、日本の伝統的な舞台芸術である能楽の演出の一形態を指します。この言葉は、番組の中で曲名の隣に小さく併記されることから来ています。能楽にはさまざまな演出方法があり、その中でも小書は特に特殊な演出とされています。小書の背後には、家元の許可が必要な演出があるという重要な特徴が存在します。

小書と替えの違い

能楽には大きく分けて「替（かえ）」と「小書」の二つの特殊演出があります。替は単に装束や小道具の変更を行うもので、特別な許可を必要としません。一方、小書は、家元からの許可を受けて初めて演じることができる特殊演出です。このように、替と小書はその許可に基づいて明確に区別されます。

小書という言葉が広まったのは明治維新以降のことであり、それ以前は各流派の家元が将軍家に上演できる曲目を「書上（かきあげ）」として提出していました。現在の小書は、当時に書かれた「習事」として文書に記記されるようになりました。

小書の例

能楽の中には、小書をまったく持たない演目も存在しますが、多くの演目にはいくつかの小書が付随しています。また、複数の小書を組み合わせて一つの演目を演じることもあり、これにより演出の幅が広がることになります。

小書の流儀一覧

小書はそれぞれの流派により異なり、以下のような流派が小書を持っていることが知られています。

• - 観世流（略称：観）
• - シテ方宝生流（略称：宝）
• - ワキ方宝生流（略称：下）
• - 金春流（略称：春）
• - 金剛流（略称：剛）
• - 喜多流（略称：喜）
• - 観世流片山家（略称：片）
• - 観世流梅若家（略称：梅）
• - 狂言方和泉流（略称：泉）
• - 狂言方大蔵流（略称：蔵）
• - ワキ方福王流（略称：福）

これらの流派には、それぞれ独自の小書があり、演目ごとに多様な表現が求められます。小書の存在は、伝統的な能楽における演出の奥深さと豊かさを象徴しています。

参考文献

小書を知る上での文献もいくつか存在します。著名なものには、以下のような資料があります。

• - 大喜多信秀 『謡曲秘伝書』 常磐会、1914年
• - 十六世宝生九郎 『謡曲口伝』 能楽通信社、1915年
• - 『観世流昭和版 五番綴本』 桧書店、1931 - 1934年
• - 『梅若実日記』（第六巻、第七巻）
• - 国立能楽堂公演記録資料

これらの書籍や資料は、能楽の小書について深く掘り下げる手助けとなります。能楽の特殊な演出に興味がある人々にとって、小書はその理解を深めるための重要な要素となるでしょう。

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