小松茂美

小松茂美 - 古筆学者・美術史学者

生涯と経歴

小松茂美（こまつ しげみ）は、1925年3月30日、山口県岩国市に生まれました。彼の学問の道は、1938年に旧制崇徳中学校に進学したことから始まりました。その後、1942年には旧制山口県立柳井中学校を卒業し、国鉄で働く父の影響で広島鉄道局に勤務することとなります。

1945年8月6日、広島での原爆投下の際、彼は広島駅近くの庁舎内におり、被爆の経験をしました。この悲劇的な出来事は、彼のその後の人生に大きな影響を与えました。戦後は国鉄での勤務を続ける傍ら、興味を持った「平家納経」の美しさに惹かれ、研究を始めました。

26歳の時、彼は美術書『いつくしま』を出版し、学術的な評価を受けました。1951年、運輸省自動車局への転任を機に上京し、源氏学者の池田亀鑑に師事し、本格的な学問のスタートを切りました。1953年には東京国立博物館に就職し、ここから彼の古筆学の研究が本格化していきます。

研究業績

小松は1961年に『後撰和歌集 校本と研究』を完成させ、日本における『後撰和歌集』研究の基礎を築きました。この作品では、写本の筆跡を科学的に分析する手法を開発しました。同年、彼は東洋大学で文学博士号を取得し、以降も精力的に研究を続けます。

1966年に発表した『平安朝伝来の白氏文集と三跡の研究』では、白居易の作品の受容と、漢字文化圏における書の歴史の新たな視点を提供しました。また、1973年には新たな学問領域「古筆学」を提唱し、1976年に発表した『平家納経の研究』においては、彼の古筆学の手法を駆使して、平家納経の美術史的位置づけとその歴史的背景を明らかにしました。この業績を通じて、1979年度の朝日賞を受賞しています。

80年代に入ると、小松は東京国立博物館を定年退官し、その後古筆学研究所を設立。2001年には著作集の完結を迎え、以降は研究活動に専念しました。

文化への貢献

彼はまた、旺文社の筆頭株主であるセンチュリー文化財団の理事としても活動し、1990年からはセンチュリーミュージアムの初代館長を務めました。彼の研究は書道や美術だけでなく、能や歌舞伎、茶道、香道、建築など多岐にわたり、日本文化に対する深い造詣を示しています。また、数々の大学で非常勤講師を務め、多くの学生を指導しました。

最後の日々

小松茂美は、2010年5月21日に心不全で逝去しました。研究活動を続けながら、多くの業績を残した彼は、今なお日本の人文科学における重要な研究者として記憶されています。彼の著作は、書道史や美術史、工芸史をはじめとする幅広い分野において、その卓越した知識と洞察を示すものであり、日本文化の深い理解が込められています。彼の研究成果は、未だに多くの学者に影響を与え続けています。

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