小林健二 (将棋棋士)

小林健二九段の棋士人生：600勝と振り飛車の軌跡

1957年生まれの小林健二九段は、香川県高松市出身の将棋棋士です。1972年、わずか14歳でプロの道へ進み、師匠である板谷進九段のもとで研鑽を積みました。若手時代は、オールラウンドな棋風で知られ、矢倉を得意としていました。しかし、1989年頃からは振り飛車党へと転向し、特に四間飛車を武器に数々の勝利を収めました。

四段時代には、第18期王位戦挑戦者決定リーグ戦で、白組を全勝で優勝する快挙を成し遂げました。惜しくも挑戦者決定戦で敗れはしましたが、四段棋士によるタイトル挑戦の可能性に将棋界が沸き立った出来事でした。この時、師匠の板谷九段からは「負けたら記録係をやらせる」というプレッシャーをかけられていたというエピソードも残っています。実際、王位戦第3局では記録係を務めたそうです。

1985年度の第44期順位戦では、師匠の板谷九段とA級昇格を争う展開となり、小林九段が2位で初のA級入りを果たしました。A級順位戦には通算4期在籍し、その棋力と安定感を示しました。

小林九段は、1991年には振り飛車戦法でA級に復帰を果たし、その卓越した戦術眼を示しました。特に「スーパー四間飛車」と称されたその棋風は、多くの将棋ファンを魅了し、著書の出版やNHK教育テレビでの講座担当など、後進の育成にも尽力しました。杉本昌隆八段と共に、藤井システム登場以前の四間飛車の定跡発展に貢献したことは特筆すべきでしょう。立石流四間飛車が有名になると、その戦法や四間飛車穴熊などを得意とするようになりました。相振り飛車での左玉も使いこなすオールラウンダーとしての側面も持ち合わせていました。

2009年6月9日には、通算600勝を達成し、将棋栄誉賞を受賞しました。これは、将棋界における偉大な功績の一つと言えるでしょう。しかし、2018年度からは順位戦出場を放棄し、フリークラスへ転出。2022年3月31日、65歳の誕生日、そしてフリークラス最終年となる日に、竜王戦6組昇級者決定戦で敗れ、現役を引退しました。惜しくも通算700勝には届きませんでしたが、その棋士人生は、多くのファンに感動と記憶を残しました。通算成績は699勝775敗です。

小林九段は、対局以外でも、将棋界の発展に貢献しました。インターネット将棋にも積極的に参加し、実名での登録が原則であった時代から積極的に対局を行っていました。また、大阪市内で将棋教室を主催し、その教室から奨励会入りした棋士もいるなど、後進の育成にも熱心に取り組んできました。東南アジア、南アジアでの将棋普及にも尽力し、マレーシアでの将棋大会に参加したり、2023年にはベトナムでの公式戦対局の立会人を務めるなど、国際的な活動にも貢献しました。

趣味はゴルフや草野球で、関西将棋会館の野球部にも在籍していました。美川憲一さんのモノマネを特技としており、駒音コンサートなどで披露したこともあります。1993年にはテレビドラマ『さすらい刑事旅情編V』にも出演するなど、多方面で活躍しました。

弟子も多く、2023年時点では森信雄門下、所司和晴門下に次ぐ多数の弟子が現役で活躍しています。中でも、杉本昌隆八段を師匠の板谷九段の急逝後預かり、事実上の「大師匠」として紹介されることもあります。また、アマチュア強豪からプロ入りした今泉健司氏を弟子として迎え、師弟対局が実現したことも話題となりました。

小林健二九段の棋士人生は、600勝という偉業達成、振り飛車党としての活躍、そして数多くの弟子育成など、将棋界への多大な貢献があったと言えるでしょう。その功績は、これからも長く語り継がれていくことでしょう。

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