小田原急行鉄道1形電車

小田原急行鉄道1形電車

小田原急行鉄道1形電車（おだわらきゅうこうてつどう1がたでんしゃ）は、1927年に小田原急行鉄道が開業した際に導入された電車です。この車両は、日本車輌製造によって1926年から1927年にかけて製造された18両からなり、当初は新宿駅と稲田登戸駅（現在の向ヶ丘遊園駅）間の近郊区間用として使用されました。開業時からその運行を担当し、1942年に東京急行電鉄（大東急）に合併された後は東急デハ1150形へと形式が変更されました。終戦後には小田急電鉄として再独立し、1950年には小田急デハ1100形に改名されましたが、1960年までに全車両は他の鉄道会社に売却され、形式が消滅しました。しかし、1981年に熊本電気鉄道から1両が譲り受けられ、開業当初の仕様に復元されて保存されています。ここでは「小田急」と言った場合には、小田原急行鉄道および小田急電鉄を指します。

車体と内装

小田原急行鉄道1形電車は、全長14.2mの半鋼製車体を持ち、片開き扉を3箇所に配置しています。側面の窓は下降窓（落とし窓）で、日差しを避けるためによろい戸が装備されています。車両の前面は3枚窓の非貫通型で、これは長距離用に製造された101形と同様のデザインです。

車内は、扉の間にロングシートが設置されており、室内照明には白熱灯が使われていました。内部には多くの木製部品が使われており、温かみのある印象を与えます。運転台は中央に位置し、客室とは真鍮製のパイプ（H形ポール）で隔てられていますが、モハ18号車のみは壁で仕切られていました。

主な機器

この車両は、近郊区間の各駅停車を担うため、主電動機として80馬力のMB-64-C形を4基搭載しています。制御装置は、三菱電機がウェスティングハウス・エレクトリックと提携して導入したHL形制御方式で、ブレーキはAMM-C形の自動空気ブレーキを装備しています。台車は住友金属工業製のKS30Sが使用されています。

歴史

創業期

新宿 - 稲田登戸間で使用されたこの電車は、特にラッシュ時に2両編成で運用されていました。1941年には運転室の改造が始まり、モハ2号が最初に改造されたものの、大破し1942年に改修されました。この改造では、運転室の前後方向を拡大するための工事が行われ、デハ1160（モハ10）なども同様の改造を受けました。

戦後

1946年には、進駐軍専用列車の運行が開始され、特別に整備された車両が「白帯車」として運用されました。1947年には9両が相模鉄道に譲渡され、1951年には新たに改番されました。1958年にはデハ1101が荷物電車に改造され、荷物輸送に活用されるようになりました。

最後のデハ1101号車は1976年に運行を終了し、その後も荷物電車としての役割を果たしました。1981年に熊本電気鉄道から廃車されたモハ301が小田急に譲渡され、復元工事が進められました。1984年にはほぼ製造当初の状態に戻って展示されています。

終わりに

小田原急行鉄道1形電車は、数多くの改造と譲渡を経て、今でも地域の鉄道史に重要な位置を占めています。現存する車両は歴史の証人として、多くの人々にその魅力を伝え続けています。

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