小粥正巳

小粥正巳：激動の時代を駆け抜けた大蔵官僚

小粥正巳（こがゆ まさみ）は、1931年8月28日に東京府で生まれ、2004年3月16日に心不全のため72歳で亡くなった大蔵官僚です。その生涯は、昭和という激動の時代における日本の経済政策の中枢を担い、多岐にわたる要職を歴任しました。

生い立ちと学歴

小粥は、旧制東京都立第四中学校（現在の東京都立戸山高等学校）を経て、第一高等学校理科甲類に進学しました。1947年の学制改革後、新制東京大学理科一類に合格しますが、GHQ占領下の混乱とインフレに直面し、自身の進路について深く考えるようになります。翌年、東大文科一類を受験し直し、合格。東京大学法学部第1類（私法コース）を卒業しました。この進路変更は、彼が単なる理系的な思考だけでなく、社会の構造や制度に対する深い関心を持っていたことを示唆しています。

大蔵省入省から要職歴任へ

1956年、小粥は大蔵省に入省しました。同期には秦郁彦、大橋宗夫（関税局長）、北村恭二（証券局長）など、後に各方面で活躍する人物が名を連ねていました。小粥は、大臣官房秘書課長、近畿財務局長など、キャリアの初期から主要なポストを経験し、着実にその地位を築き上げていきました。特に、中曽根康弘首相の強い要望により、内閣総理大臣秘書官として総理官邸入りしたことは、彼の能力と人望の高さを物語っています。

主計局長、大蔵事務次官としての活躍

その後、小粥は主計局長、大蔵事務次官という大蔵省の中枢を担う要職を歴任します。主計局長時代には、予算編成において重要な役割を果たし、大蔵事務次官時代には、省全体の運営を統括しました。これらの経験を通して、日本の経済政策の根幹を支えるとともに、その動向を左右する影響力を持つ存在となりました。

退官後の活動と晩年

大蔵事務次官退任後、小粥は公正取引委員会委員長に就任し、市場の公正な競争環境を維持するための政策に取り組みました。その後、日本開発銀行（後に日本政策投資銀行）総裁として、日本の経済成長を支えるための投資活動を推進しました。また、日本経済研究所会長を務めるなど、その知識と経験を活かし、幅広い分野で活躍しました。2004年3月16日、心不全のため72歳で死去。その功績を称えられ、同日、瑞宝大綬章が追贈されました。

人物像

小粥正巳は、その経歴からもわかるように、非常に高い能力と責任感を持った人物でした。困難な課題にも臆することなく立ち向かい、常に冷静な判断を下すことで、数々の難局を乗り越えてきました。その一方で、温厚で人情味あふれる一面も持ち合わせており、多くの人々から信頼を集めていました。また、プライベートでは一橋大学法科大学院長・教授の小粥太郎を実子に持つ父親でもありました。

略歴

1956年4月：主税局調査課
1958年11月：近畿財務局理財部
1959年11月：高松国税局直税部
1960年9月：大臣官房調査課調査主任
1962年7月：大臣官房調査課調査第一係長
1963年7月：藤沢税務署長
1964年7月：証券局企業財務課長補佐
1967年3月：日本貿易振興会バンクーバー駐在
1969年7月：大臣官房秘書課長補佐（総括）
1971年7月：銀行局総務課長補佐（総括）
1973年7月：東京国税局間税部長
1974年7月：大平正芳蔵相秘書官
1976年12月：大臣官房参事官兼内閣官房内閣審議官（福田赳夫内閣総理大臣の指名のあった保田博の代理としておよそ一ヶ月間、総理秘書官を務めた。）
1977年2月：証券局資本市場課長
1978年6月：主計局主計官（運輸担当、郵政および電電公社担当）
1979年7月：大臣官房秘書課長
1982年6月：近畿財務局長
1982年11月：中曽根康弘内閣総理大臣秘書官
1985年6月：主計局次長（筆頭）
1986年6月：大臣官房長
1988年6月：主計局長
1990年6月：大蔵事務次官（1991年6月にて退官）
1992年：公正取引委員会委員長（1996年まで）
1998年1月：日本開発銀行総裁（2001年1月まで、※1999年から日本政策投資銀行総裁）
* その他、近鉄取締役、日本経済研究所会長など

小粥正巳は、その卓越した能力と人格によって、日本の経済発展に大きく貢献した人物として、今後も長く記憶されることでしょう。

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