小説家 (諸子百家)

小説家とは、中国の春秋戦国時代に存在した諸子百家の学派の一つです。世間の出来事や説話を語り伝え、記録として書籍に残した集団であり、その活動は民衆の生活に密着していました。『漢書』芸文志によると、小説家は民間の風俗を管理する役人の間から発生したと推測されています。代表的な人物としては、鬻子、青史子、師曠、宋子が挙げられますが、彼らの著作の多くは現存していません。

小説家の著作は現存しないものがほとんどですが、その存在と活動を知る手がかりは、他の文献にわずかに残されています。例えば、法家の代表作である『韓非子』の中には、「説」の字がつく篇に小説家の思想や説話が引用されている箇所があります。また、道家の代表作である『荘子』にも、小説家の影響が見て取れる部分が見られます。さらに、前漢の劉向が編纂した『説苑』や『戦国策』にも、小説家が伝え残した故事や説話が収録されていると考えられています。これらの文献から、当時の小説家がどのような内容の書物を著し、どのような思想を持っていたのかを推測することができます。

特に注目すべきは、『青史子』という、現在では失われてしまった書物です。この書物には、胎教に関する記述があったと伝えられており、『賈誼新書』の胎教篇や『大戴礼記』の保傅篇にその内容の一部が引用されています。これは、小説家が単に世間の出来事を記録するだけでなく、当時の社会や文化に影響を与える思想や倫理観を提示していたことを示唆しています。

後世の中国文学においては、小説家は文言小説と白話小説という異なる分類に分けられて位置づけられました。文言小説は「子部小説家類」に、白話小説は「集部」に分類され、それぞれ異なる文体や表現方法を用いた作品が数多く生み出されました。小説家の思想や手法は、後世の文学の発展に大きな影響を与えたと言えるでしょう。

小説家の存在と活動は、現存する資料が少ないため、その全貌を明らかにすることは困難です。しかし、わずかな断片からでも、彼らが当時の社会や文化に深く関わっていたこと、そして後世の文学に大きな影響を与えたことがわかります。今後も新たな発見や研究によって、小説家についての理解が深まっていくことが期待されます。

参考文献
江連隆『諸子百家の事典』大修館書店、2000年。
前野直彬『中国小説史考』秋山書店、1975年。

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