小野屋駅

小野屋駅：久大本線の歴史と地域に根ざした駅

駅の概要

大分県由布市庄内町東長宝にあるJR九州久大本線の小野屋駅は、そのユニークな駅名で知られています。駅名は、所在地ではなく、開業当時から駅近くに存在する「小野屋酒店」の屋号に由来しています。現在も営業を続けるこの酒店は、地域の重要なランドマークであり、駅名にもその歴史が刻まれています。

歴史を刻む軌跡

小野屋駅の歴史は、1915年（大正4年）10月30日、大湯鉄道大分市 - 小野屋駅間開業と同時に始まりました。その後、1922年（大正11年）の国有化を経て、鉄道省の駅となりました。1923年（大正12年）には大湯線湯平駅間の開通により中間駅となり、地域の交通の要衝としての役割を担うようになりました。1971年（昭和46年）に貨物取扱いを廃止し、1984年（昭和59年）には荷物扱いも廃止、業務委託化となりました。1987年（昭和62年）の国鉄分割民営化後もJR九州が運営を継承し、2007年（平成19年）には駅舎が改築され、現代的な駅舎に生まれ変わりました。2008年には特急「ゆふ」「ゆふDX」が臨時停車するようになり利便性が向上しましたが、2009年には臨時停車が終了しました。2016年（平成28年）4月からは無人駅となり、現在は平日7時から13時まで、由布市が委託した嘱託員が窓口業務を行っています。2020年（令和2年）7月豪雨による被災で、一時運転見合わせとなりましたが、同年8月には運転が再開されています。

駅名の由来：地域と深く結びついた名前

小野屋駅という駅名は、単なる地名ではなく、地域の歴史と深く関わっています。駅周辺はかつて大分郡阿南村と呼ばれており、「小野屋酒店」は、この地域の繁栄を象徴する存在でした。初代阿南村村長であり、大湯鉄道の監査役、大株主でもあった小野昂氏が経営するこの酒店は、地域の中心的な存在として、小学校や役場などの施設が集積する場所となりました。「小野屋酒店に行く」ことは「この地域に行く」ことと同義語となり、駅名に採用されたのです。個人商店の屋号を駅名とした例は全国的に珍しく、地域に密着した駅であることが分かります。現在でも、小野屋酒店をはじめ、小野や小野屋を冠する店が地域に多く存在し、その名残を今に伝えています。ちなみに、大湯鉄道を興したのは、小野駿一氏という人物です。

駅構造と設備

小野屋駅は相対式ホーム2面2線を有する地上駅です。駅舎は南側に位置し、庄内・由布院方面のホームに隣接しています。北側の大分方面ホームへは跨線橋で連絡しています。駅には簡易型自動券売機が設置されていますが、ICカードは利用できません。2007年に改築された駅舎は鉄骨平屋建てで、多目的トイレも備えています。無人駅化後も、近隣の由布高等学校の生徒への定期券販売など、地域住民へのサービス提供のため、一定時間窓口業務が行われています。

利用状況と周辺環境

小野屋駅の利用状況は、開業当初から近年まで大きく変化しています。1965年（昭和40年）度は年間54万人以上の乗降客があり、手荷物や小荷物も取り扱っていました。しかし、2015年（平成27年）度には年間乗車人員が13万人程度に減少しています。これは、自動車の普及や人口減少などの社会情勢の変化による影響が考えられます。

駅周辺には、種田山頭火の句碑をはじめ、由布市コミュニティバスのバス停、阿南小学校、阿南郵便局、庄内温泉、大分銀行小野屋支店、大分県立由布高等学校、大分県立庄内養護学校などがあります。また、国道210号も近くを通っており、交通の便も比較的良好です。竹田市のコミュニティバスも停車しており、周辺地域とのアクセスも確保されています。

隣の駅

天神山駅
鬼瀬駅

まとめ

小野屋駅は、その歴史と地域との深い結びつき、そしてユニークな駅名を持つ、久大本線に位置する重要な駅です。地域の変遷を映し出しながら、現在も地域住民の生活を支え続けています。駅周辺の環境も魅力的で、観光客にとっても魅力的な場所と言えるでしょう。 小野屋駅を訪れる際には、駅舎だけでなく、周辺の歴史や文化にも触れてみてはいかがでしょうか。

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