大湯鉄道

大湯鉄道：大分と湯平温泉を繋いだローカル私鉄の軌跡

大湯鉄道は、大分市と由布市湯平温泉を結ぶことを目指し、1913年（大正2年）に設立された私鉄です。1915年（大正4年）10月30日、大分市駅（現在のJR日豊本線大分駅の東隣）から小野屋駅（現在の由布市）までの21.9km区間が開業しました。この路線は、その後、国有化され、現在のJR久大本線の一部となっています。

開業と国有化までの道のり

当初計画では、湯平温泉まで路線を延伸させる予定でしたが、第一次世界大戦による資材の高騰と資金不足により、計画は頓挫しました。しかし、1919年（大正8年）に「久留米より日田を経て大分に至る鉄道」が鉄道敷設法に盛り込まれ、建設予算が付くことになります。この計画に沿って小野屋駅から天ヶ瀬駅への延伸工事が開始された際に、大湯鉄道は国有化の対象となりました。

1922年（大正11年）、第45帝国議会で買収が審議され、大分県出身の国会議員らの存在にもかかわらず可決。同年12月、鉄道省に買収され、「国鉄大湯線」となりました。その後、路線は段階的に延伸され、1923年には湯平駅、1925年には由布院駅（当時南由布駅・北由布駅）、1929年には豊後森駅まで開通。1934年、日田から天ヶ瀬間の開通により、大分と久留米を結ぶ国鉄久大線の一部となりました。

経営状況と東武鉄道との関係

大湯鉄道は開業以来、輸送量が増加し、政府補助金も得て順調に経営を続けました。買収時の価格は569,302円と、建設費494,696円を上回りました。

興味深い点として、大湯鉄道の取締役に東武鉄道の根津嘉一郎の名前があります。開業時に導入された車両の多くは東武鉄道の中古車でしたが、経営陣や大株主は地元の人物が中心で、根津氏との具体的な関係性は不明瞭です。根津氏の関与の経緯は、今後の研究課題と言えるでしょう。

車両と設備

開業当初、大湯鉄道は機関車4両、客車9両、貨車28両を保有していました。これらの車両は、多くが東武鉄道から購入された中古車でした。その後、国鉄から払い下げを受けた車両も運用されていました。

駅一覧

開業当初の駅は以下の通りです。国有化後、一部の停留場は廃止されました。

大分市駅（後に大分駅と統合され廃止）
古国府停留場（廃止）
永興停留場（駅に変更）
賀来駅
森ノ木停留場（廃止）
平横瀬停留場（廃止）
向之原駅
鬼瀬停留場（廃止）
櫟木停留場（廃止）
小野屋駅

開業100周年記念事業

2015年（平成27年）には、大湯鉄道開業100周年を記念した事業が計画されました。この事業は、「豊後大正ロマン街道・大湯鉄道物語」プロジェクトとして推進され、地元の活性化に貢献しようとしています。

まとめ

大湯鉄道は、地域住民の交通手段を確保し、温泉地へのアクセスを向上させる役割を果たしました。短命ではありましたが、その歴史は、地域の鉄道発展史において重要な一ページを刻んでいます。東武鉄道との関わりや、詳細な経営状況などは、今後の研究によってさらに解明されることが期待されます。

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