小野満

小野満（おの みつる）の生涯

小野 満（おの みつる、1929年1月3日 - 2008年1月2日）は、千葉県市原市出身の音楽家であり、ベーシスト、バンドマスター、指揮者として幅広い分野で活躍しました。ジャズカルテット「ビッグ・フォア」のベーシスト、小野満と「シックス・ブラザーズ」のバンドマスター兼ベーシスト、そして「小野満とスイングビーバーズ」のバンドマスター兼指揮者として、日本の音楽界に大きな足跡を残しました。

特に、「スイングビーバーズ」を率いて1967年から1983年までの17年間、NHK紅白歌合戦の白組の演奏と指揮を担当したことは、彼のキャリアにおける重要なハイライトの一つです。また、甥にはロックドラマーの泉水敏郎がいます。

生い立ちと音楽への道

1929年1月3日、小野満は千葉県市原市磯ヶ谷で四人兄弟の三男として誕生しました。旧姓は泉水でしたが、生家が貧しかったため、生後間もなく同じ市原市の小野家の養子となり、姉崎の小野家の長男として育ちました。千葉県立姉崎小学校、千葉工業高校を卒業後、1947年に18歳で三木鶏郎バンドに入団し、ジョージ川口や鈴木章治らと共に活動を開始。

その後、長尾正志とビーバップエイセス、後藤博とデキシーランダーズに在籍し、ジャズの基礎を築きました。後藤博とデキシーランダーズ時代には、銀座の一流ダンスホール「美松」に出演するなど、当時のジャズシーンで注目を集めました。

ゲイセプテッドでの飛躍

1951年、レイモンド・コンデらに招かれ「ゲイセプテッド」に入団。当時、GHQによってランク付けされていた音楽バンドの中で、「Special A」という高い評価を得るバンドの一員として名声を高めました。ゲイセプテッドには、ジョージ川口（ドラムス）、平岡精二（ヴィブラフォン）、チャーリィ脇野（ギター）、フランシスコ･キーコ（ピアノ）、ナンシー梅木（ボーカル）といった錚々たるメンバーが在籍していました。

数々のバンド結成

1953年には、池田操とリズムキングスにジョージ川口と共に参加し、同年「ビッグ・フォア」を結成。このバンドは大きな人気を博し、メンバーにはジョージ川口（ドラムス）、中村八大（ピアノ）、松本英彦（テナーサックス）がいました。

1955年には「小野満とフォア・ブラザーズ」、1956年には「小野満とシックス・ブラザーズ」を結成しました。「シックス・ブラザーズ」は北村英治（クラリネット）、チャーリィ脇野（ギター）、増田一郎（ヴァイブ）、太田幸雄（ピアノ）、佐藤イサオ（ドラムス）という豪華メンバーで構成され、美空ひばりとの共演も人気を博しました。

スイングビーバーズと紅白歌合戦

1959年、「小野満とスイングビーバーズ」を結成し、上野のダンスホール「新世紀」の専属バンドとして活動を開始。このバンドは、日本のビッグバンドを代表する存在となりました。1967年から1983年まで、NHK紅白歌合戦の白組の演奏を担当し、その音楽は多くの人々に感動を与えました。

1977年には、芸能生活30周年を記念したリサイタルを故郷の市原市で開催しました。しかし、時代の変化とともにビッグバンドの需要が減少し、また小野自身の体調不良も重なり、1984年にスイングビーバーズは解散しました。

映画出演と音楽作品

小野満は音楽活動だけでなく、映画にも出演しています。1956年には『宝島遠征』や『恋すがた狐御殿』、1958年には『希望の乙女』、1961年には『北上川悲歌』などに出演しています。

また、数多くの音楽作品も残しており、代表的なものに『ファンキー・ジャム・セッション』、『ミッドナイト・ジャズ・セッション』、『オリジナル・ビッグ・フォア』、『リーダース・アイディア』などがあります。

私生活と晩年

1956年に美空ひばりと婚約しましたが、後に解消。1958年に結婚し、一男二女をもうけました。しかし、1966年に自宅火災で妻と長女を失うという悲劇に見舞われました。1970年に再婚。

引退後は、飲食店の経営や講演活動、音楽出版などを行いながら静養しました。晩年は糖尿病や足の不自由さに苦しみながらも、療養先の鴨川を愛しました。

2000年頃には心筋梗塞で倒れましたが、手術で一命を取り留めました。しかし、その後は長期の闘病生活を送ることとなり、2008年1月2日に78歳で亡くなりました。葬儀は市原市の妙経寺で執り行われ、戒名は『正道院音響日満信士』と名付けられました。

美空ひばりとの関係

小野満と美空ひばりは、婚約を解消した後も深い信頼関係で結ばれていました。小野はひばりにジャズの手ほどきをし、シックス・ブラザーズがひばりのバックバンドを務めるなど、音楽を通じて強い絆を育みました。1957年にひばりが塩酸をかけられる事件が起きた際には、小野がひばりを背負って病院へ駆けつけたというエピソードが残っています。

小野はひばりを「国の宝」と考え、結婚することで彼女の活動を制限することを恐れ、最終的にはひばりとの結婚を諦めたと言われています。スイングビーバーズ結成後、ひばりのバックバンドから身を引きましたが、その後もひばりのカセットテープやCDを愛聴していました。

趣味やこだわり

麻雀とゴルフを愛し、特に麻雀は「麻雀で身体を壊した」と言われるほど熱中していました。また、身だしなみに非常に気を使い、銀座の英國屋で仕立てたスーツを愛用していました。食べ物では、餅や煎餅、海苔、魚料理、鍋物などを好みました。

エピソード

幼少期は病弱でしたが、マムシの生き血を飲んで健康を回復したという逸話があります。1969年には母校の姉崎小学校の校歌を作曲。また、シックス･ブラザーズの仲間であった佐藤イサオの息子であるウガンダ・トラの名付け親でもあります。

甘いマスクの持ち主で、美空ひばりをはじめ、宝塚歌劇団の女優などとの恋の噂が絶えませんでした。また、面倒見が良く、多くの人の世話役や紹介役を務めました。親しかった著名人には、江利チエミ、田岡一雄、浜田幸一、周防郁雄、山口洋子などがいます。森進一の事を個人的に可愛がっていたそうです。

まとめ

小野満は、その卓越した音楽性と人間性で、日本の音楽界に多大な貢献をしました。彼の音楽は今もなお多くの人々に愛され続けています。

もう一度検索