小額通貨の整理及び支払金の端数計算に関する法律

小額通貨整理法について

小額通貨整理法（しょうがくつうかのせいりおよびしはらいきんのはすうけいさんにかんするほうりつ）は、1953年（昭和28年）7月15日に公布された法律です。この法律は、当時の経済状況を鑑み、取引においてほとんど利用されていなかった1円未満の小額通貨を整理・廃止することを目的として制定されました。

制定の背景

第二次世界大戦後の混乱期を経て、物価が著しく変動し、1円未満の通貨、特に銭や厘といった単位の通貨は、その額面価値が実質的に低くなり、取引の際にほとんど使用されなくなっていました。そのため、これらの小額通貨を整理し、通貨制度を簡素化する必要性が高まりました。

法律の内容

この法律の主な内容は以下の通りです。

1. 1円未満の通貨の廃止: 1953年12月31日をもって、1円未満の補助貨幣、小額政府紙幣、小額日本銀行券の通用が禁止されました。これには、銭や厘といった単位の通貨が含まれます。
2. 一円黄銅貨の廃止: 一円黄銅貨も、金属価格が高騰し、鋳潰しの恐れがあったため、廃止の対象となりました。
3. 引換期間の設定: 廃止された小額通貨の引換期間は、1954年1月4日から同年6月30日までと定められました。この期間中に、銀行などで現行通貨との交換が可能でした。
4. 端数処理: 引換の際、合計金額に1円未満の端数が生じた場合は、50銭以上1円未満の端数を1円とみなして計算されました。また、債務の支払いにおいても、特約がない限り同様の端数処理が行われました。
5. 未回収の小額紙幣の処理: 引換期間終了後、回収されなかった小額紙幣は、発行残高から除去され、政府の歳入として処理されました。

影響

小額通貨整理法の施行により、日本の通貨制度は大きく変化しました。

通貨の単純化: 1円未満の通貨が廃止されたことで、取引がより円滑になり、計算も簡略化されました。
一円アルミニウム貨の発行: 一円黄銅貨の廃止に伴い、1955年に一円アルミニウム貨が発行されました。これにより、最低額面の硬貨が復活しました。
江戸時代貨幣の失効: 江戸時代に鋳造された寛永通宝や文久永宝といった貨幣も、この法律によって通貨としての効力を失いました。これらは、明治時代以降も法的には通貨として有効でしたが、この法律によって無効となりました。
政府紙幣の失効: 1948年発行の板垣50銭紙幣は、この法律の施行直前で有効だった唯一の政府紙幣でしたが、この法律により失効しました。結果として、この法律により日本の政府紙幣は全て無効となったことになります。

その後の経過

小額通貨整理法は、1988年4月1日に通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律（通貨法）の施行に伴い廃止されました。通貨法では、銭や厘は計算単位としてのみ定義され、1円未満の通貨は規定されませんでした。ただし、1円未満の通貨の再発行を禁じる規定は無くなりましたが、現在に至るまで1円未満の通貨は発行されていません。

まとめ

小額通貨整理法は、戦後のインフレーションにより価値が低下した小額通貨を整理し、通貨制度を簡素化するために制定された法律です。この法律によって、日本はより使いやすい通貨制度へと移行しました。現在では銭や厘といった単位の通貨は発行されていませんが、金額計算上は補助単位として使用され続けています。

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