少年少女世界推理文学全集

少年少女世界推理文学全集：ミステリーとSFの宝箱

1963年から1965年にかけて、あかね書房より刊行された『少年少女世界推理文学全集』は、推理小説を愛する少年少女にとって、まさに夢のようなシリーズでした。全20巻というボリュームで、世界的に有名な推理小説の傑作が網羅されています。

この全集の大きな特徴は、その選りすぐりの内容です。エドガー・アラン・ポーの『モルグ街の怪事件』から始まり、コナン・ドイルのシャーロック・ホームズシリーズ、アガサ・クリスティーの代表作、そしてモーリス・ルブランの怪盗ルパンの活躍など、名だたる巨匠の作品が収録されています。さらに、意外なことに19巻と20巻にはSF小説が収められており、ミステリーとSFの両方を堪能できる、贅沢な内容となっています。

多くの巻では、2つの長編小説を1冊に収録しているのも特徴の一つです。例えば、アガサ・クリスティーの『ABC怪事件』と『恐怖の旅客機』、『エジプト十字架の秘密』と『十四のピストルのなぞ』といった組み合わせは、それぞれの物語の世界観を楽しみながら、異なる謎解きを味わうことができる構成となっています。

翻訳陣も豪華です。久米元一、白木茂、神宮輝夫、那須辰造など、当時第一線で活躍した翻訳家たちが、それぞれの持ち味を生かした翻訳で、原文の雰囲気を余すことなく伝えています。

監修には、ノーベル文学賞受賞者である川端康成氏をはじめ、中野好夫氏、阪本一郎氏という錚々たる顔ぶれが名を連ねています。彼らの深い知識と経験に基づいた選書は、この全集の質の高さを保証するものです。

そして、忘れてはならないのが、その装丁です。洒落たデザインと、クエスチョンマークを配した表紙は、当時多くの少年少女を魅了しました。箱入りのハードカバー仕様も、所有する喜びを高める要素となっています。

収録作品は、古典的な本格ミステリーから、スリリングなハードボイルドまで幅広く網羅されており、読者の年齢や好みに合わせて楽しむことができます。シリーズを通して、推理小説の魅力を存分に味わうことができます。また、SF小説の収録は、当時の少年少女の好奇心を刺激する役割も果たしていたでしょう。

『少年少女世界推理文学全集』は、単なる推理小説のアンソロジーではありません。質の高い翻訳、豪華な監修陣、そして魅力的な装丁が三位一体となった、まさに「宝箱」と言えるシリーズです。この全集を通じて、多くの少年少女たちが推理小説やSFの世界に足を踏み入れ、豊かな読書体験を積んだことでしょう。現在では入手困難な希少な全集ですが、その価値は、時代を超えて色あせることがありません。

主な収録作品一覧（抜粋）

エドガー・アラン・ポー：『モルグ街の怪事件』
コナン・ドイル：『シャーロック・ホームズの冒険』（複数の短編収録）
アガサ・クリスティー：『ABC怪事件』『恐怖の旅客機』など
モーリス・ルブラン：『ルパンの冒険』（複数の短編収録）
G.K.チェスタトン：『ふしぎな足音』（複数の短編収録）
ディクスン・カー：『魔女のかくれ家』『二人の腕輪』
エラリー・クイーン：『エジプト十字架の秘密』『十四のピストルのなぞ』
ウィリアム・アイリッシュ：『恐怖の黒いカーテン』『アリスが消えた』
ロバート・ルイス・スティーブンソン：『ジキル博士とハイド氏』『自殺クラブ』
ロバート・A・ハインライン、カート・シオドマク、アレクサンドル・ベリャーエフ、アイザック・アシモフ：SF小説（複数の作品収録）

※上記は収録作品の一部です。全20巻にわたる充実した内容となっています。

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