南部鉄道

南部鉄道

南部鉄道は、かつて青森県八戸市の尻内駅（現在の八戸駅）と、三戸郡五戸町の五戸駅を結んでいた鉄道路線、およびその運営会社です。1929年に開業しましたが、1968年の十勝沖地震で甚大な被害を受け、復旧することなく廃止されました。その短い歴史と、関連する情報を以下にまとめました。

歴史

開業と延伸計画

1925年4月27日、三戸郡上長苗代村（現：八戸市）から五戸町までの鉄道敷設免許が交付され、翌1926年2月21日には五戸電気鉄道として会社が設立されました。当初は電気鉄道として計画されましたが、蒸気機関車での運行に変更されました。

1929年8月23日に尻内駅から上七崎駅間が開業し、同年10月10日には志戸岸駅まで延伸されました。1930年4月1日には五戸駅まで全線が開通しました。

開業当初から、秋田県方面への延伸や、種差海岸への延長、さらに三戸町や十和田市、東北町への延伸構想がありましたが、これらの計画は実現しませんでした。

戦時下の社名変更と運行

1936年5月5日には五戸鉄道へ、1945年1月1日には南部鉄道へと社名が変更されました。
1960年には豊崎駅が開業し、時期は不明ですが、地蔵岱駅が県立種鶏場前駅に改称されました。

十勝沖地震と廃止

1968年5月16日に発生した十勝沖地震により、路盤の沈下や決壊、土砂崩れなど49箇所に及ぶ甚大な被害を受けました。駅舎やホームなどの鉄道施設も16箇所で損壊、電柱も多数倒壊しました。この地震による被害総額は2億円以上に達し、数年来の赤字経営も重なり、復旧を断念、1969年4月1日に全線廃止となりました。

会社解散

鉄道廃止後、会社は1970年5月30日に南部バスへ社名を変更し、バス専業の会社として存続しましたが、経営難のため、2017年3月1日付で岩手県北自動車へ事業譲渡され、破産。2018年4月16日に法人格が消滅しました。

路線データ

路線距離（営業キロ）：12.3km
軌間：1067mm
駅数：8駅（起終点駅含む）
複線区間：なし（全線単線）
電化区間：なし（全線非電化）
閉塞方式：通票閉塞式

運行形態

1930年8月20日改正当時

運行本数：1日12往復（4時台 - 19時台）
所要時間：全線32分

1967年9月10日当時

運行本数：1日12往復（7時台 - 20時台）
所要時間：全線27分 - 38分

駅一覧

全駅が青森県内に所在しました。所在地は休止当時のものです。

尻内駅（しりうちえき） - 八戸市
上七崎駅（かみななさきえき） - 八戸市
志戸岸駅（しどぎしえき） - 八戸市
地蔵岱駅（じぞうたいえき）→県立種鶏場前駅（けんりつしゅけいじょうまええき） - 八戸市
豊崎駅（とよさきえき） - 五戸町
上市川駅（かみいちかわえき）- 五戸町
五戸駅（ごのへえき） - 五戸町

廃止駅

上七崎駅 - 1929年10月10日廃止

車両

蒸気機関車

1 → C251, 2：開業時に鉄道省から譲渡された25t級タンク機関車。2は1940年廃車、1はC251に改番後、東野鉄道へ譲渡。
3 → 961：鉄道省から譲渡されたテンダー機関車改造のタンク機関車。軍の命令で日本製鐵輪西製鉄所に貸し渡された後、廃車手続き。
281：鉄道省から譲渡されたタンク機関車。土佐交通へ譲渡。
C319：日本製鐵釜石製鉄所から譲り受けたタンク機関車。茨城交通へ譲渡。
C400, C401：自社発注の40t級タンク機関車。C400は空気ブレーキ改造後、川崎製鉄千葉製鉄所へ、C401は電気化学へ譲渡。

ディーゼル機関車

DB251：日本車輌製造製の25tディーゼル機関車。甲州砕石へ譲渡。
DC351：汽車会社製の35tディーゼル機関車。日本冶金工業へ譲渡後、加悦[[鉄道]]を経て、現在は五戸町で保存。

客車

ハ11、12：明治時代の木製2軸客車を中古購入。鹿島参宮鉄道へ譲渡。
ナハ53 → ハフ1401

気動車

キハ1 → ハ1, キハ2 → ハ2：鋼製車体の2軸ガソリンカー。戦時中に客車化。
キハ103 → ハフ103, キハ104 → キハ105 → ハフ105
ハ40001 → キハ40001, ハ40002 → キハ40002 → ハフ40002：国鉄払い下げのキハ40000形。後にディーゼル機関搭載。
キハ41001：国鉄払い下げのキハ41000形。液体式に改造。
キハ41003

貨車

ワフ1, ワフ2
ワフ5
ワム200 - ワム202
ト1 - ト13
トム51 - トム55
トム100, トム101

逸話

2016年5月31日にNHKで放送されたドラマ「トットてれび」第4話で、1971年の連続テレビ小説「繭子ひとり」の場面が再現されました。その際、尻内駅のホームにある駅名標に、両隣の駅として南部鉄道の張田駅と八戸線の八戸駅（現：本八戸駅）が登場しました。これは、廃線となった南部鉄道の駅名がテレビドラマに登場した珍しい例です。

参考文献

白土貞夫「南部鉄道」『鉄道ピクトリアル』No. 1991967年7月臨時増刊号：私鉄車両めぐり8、1967年、pp. 6-7, 27-36。
青木栄一 著「昭和52年5月1日現在における補遺」、鉄道ピクトリアル編集部 編『私鉄車両めぐり特輯』 2巻、鉄道図書刊行会、東京、1977年、補遺3頁頁。
今尾恵介『日本[[鉄道旅行地図帳]]』 2号 東北、新潮社、2008年、38頁。

関連項目

日本の廃止[[鉄道路線一覧]]

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