山内壮夫

山内壮夫（やまうち たけお）は、明治末期の1907年に北海道で生まれ、昭和半ばの1975年に亡くなった日本の彫刻家です。特に、公共空間に設置された数多くの野外彫刻作品で知られ、その作品は故郷である北海道を中心に、日本各地で見ることができます。

生涯と活動

1907年8月12日、北海道岩見沢市に誕生した山内壮夫は、彫刻家を志し、1925年に東京高等工芸学校（現在の千葉大学工学部）の工芸彫刻部に入学しました。卒業後、創作活動を開始し、1932年には権威ある国画展にて国画奨学賞を受賞するなど、若手彫刻家として注目を集めます。翌1933年には国画会会友に推挙されました。

山内壮夫は、当時の彫刻界において、旧来の枠にとらわれない新たな表現を追求する動きに共鳴します。1936年には、本郷新、明田川孝、柳原義達といった国画会彫刻部の同志たちとともに「造型彫刻家協会」を結成しました。このグループには、後に佐藤忠良や舟越保武といった日本を代表する彫刻家たちも加わり、戦後彫刻界を牽引する重要な母体となっていきます。1937年には国画会の同人に昇格しますが、さらなる活動の場を求め、1939年には国画会を退会。本郷新、明田川孝、吉田芳夫、舟越保武、佐藤忠良、柳原義達らと共に「新制作派協会」（現在の新制作協会）彫刻部の創設に参加しました。以後、その主要メンバーとして、同会を主な舞台として創作活動を展開しました。

第二次世界大戦末期の1945年、山内壮夫は北海道札幌市へ戦時疎開し、1950年までこの地で過ごしました。戦後も精力的に活動を続け、1970年には彫刻の分野で権威ある中原悌二郎賞の選考委員を務めます。1973年には所属する新制作協会の運営委員長に就任するなど、彫刻界の発展に尽力しました。しかし、1975年4月11日、病のため東京都大田区の病院でその生涯を閉じました。

作品と遺産

山内壮夫の作品は、親しみやすく人間味あふれる表現が特徴です。特に、公共の場に設置される野外彫刻を数多く手掛け、市民生活の中に芸術をもたらすことに貢献しました。その作品は、北海道（札幌市、旭川市など）に集中して設置されていますが、長崎県、新潟県、山口県など全国各地にも見られます。

代表的な作品としては、

労農運動犠牲者の碑（1949年、北海道札幌市月寒公園）
よいこつよいこ（1952年、北海道札幌市円山動物園前）
母子像（1955年、長崎県長崎市長崎国際文化会館）
家族（1958年、新潟県新潟市新潟市庁舎）
森の歌（1958年、北海道札幌市中島公園）
笛を吹く少女（1959年、北海道札幌市中島公園）
大地（1964年、本郷新、佐藤忠良と共同制作、北海道札幌市北海道銀行本店）
新潟県戦没者慰霊碑（1967年、新潟県新潟市）
飛翔（1972年、札幌オリンピック記念モニュメント、北海道札幌市五輪大橋）
子を守る母たちI（1973年、北海道札幌市北海道立近代美術館）

などがあります。これらの作品は、公園、広場、橋のたもと、学校、病院、官公庁など、人々の生活動線の中に溶け込むように設置されており、市民にとって身近な存在となっています。「母子像」や「家族」、「子供」をテーマにした作品が多く、人間的な温かさや穏やかさが表現されています。また、「労農運動犠牲者の碑」や「新潟県戦没者慰霊碑」のような社会的なテーマを扱った作品も手掛けています。

山内壮夫は、新制作協会の創設メンバーとして戦後の日本彫刻界を牽引しただけでなく、北海道の彫刻芸術の普及にも大きく貢献しました。彼の作品は、今もなお多くの人々に親しまれ、各地の風景の一部として存在し続けています。

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