山崎保代

山崎保代：アッツ島の戦いにおける悲劇と決意

1891年山梨県に生まれた山崎保代は、陸軍士官学校卒業後、歩兵として数々の戦いを経験しました。シベリア出兵や済南事変などにも従軍し、着実にキャリアを積んだ彼は、太平洋戦争において、アッツ島防衛の重責を担うことになります。

アッツ島への着任と絶望的な状況

1943年2月、山崎大佐（当時）は北海守備第2地区隊長としてアッツ島に赴任しました。待ち受けていたのは、劣勢な兵力と物資不足という絶望的な状況でした。2650名という限られた兵力で、アメリカ軍の上陸を阻止しなければなりませんでした。

徹底抗戦と悲壮な最期

山崎大佐は、敵を島内に誘い込み、地形を生かした徹底抗戦を命令しました。アッツ島の険しい地形と濃霧という悪条件も相まって、戦闘は想像を絶する激しさとなりました。彼は、何度も増援要請を行い、一時は大本営から増援の約束を取り付けましたが、悪天候や海軍の消極的な姿勢により、最終的に増援は中止されてしまいます。

孤立無援となった守備隊は、食糧と弾薬の不足に苦しみ、絶望的な状況に陥りました。5月23日には、北方軍から玉砕の覚悟を促す電文が届きます。もはや生還の望みはほとんどありませんでした。

5月29日、山崎大佐は残された兵士たちに、最後の攻撃を命令します。彼は日の丸を手に、先頭に立って敵陣に突撃しました。満身創痍の兵士約300～400名が、彼の後を追いました。アメリカ軍の猛攻の前に、彼らは次々と倒れていきました。山崎大佐もこの激戦の中で戦死しました。アッツ島守備隊は、玉砕という悲劇的な結末を迎えたのです。

戦後の評価と慰霊

戦後、山崎大佐は二階級特進し、陸軍中将となりました。しかし、大本営からは「山崎大佐はただの一兵も援軍を求めませんでした」という発表がなされました。これは、彼の増援要請の事実を隠蔽したものであり、戦後、彼の遺骨と遺品が発見されたことで、その虚偽性が明らかになりました。

山崎大佐の父親は、戦後、アッツ島の戦いで亡くなった息子の霊を慰めるため、生家の境内に「アッツ観音」を建立しました。そして、1994年には石碑も建立され、今もなお、彼の霊を弔う人々が訪れています。

参考文献

水島周平・松下芳男『山崎部隊長』内外書房、1944年
秦郁彦編『日本陸海軍総合事典』第2版、東京大学出版会、2005年
福川秀樹『日本陸軍将官辞典』芙蓉書房出版、2001年
外山操編『陸海軍将官人事総覧 陸軍篇』芙蓉書房出版、1981年
* 東雲くによし『陸軍中将　樋口季一郎の決断』WAC、2024年

まとめ

山崎保代は、アッツ島の戦いで、圧倒的な敵の前に最後まで戦い抜いた勇敢な軍人でした。彼の悲劇的な最期は、太平洋戦争の残酷さと悲惨さを象徴する出来事の一つであり、私たちに多くの教訓を与えてくれます。彼の勇気と決意は、後世に語り継がれるべきものです。増援の遅れや情報操作といった当時の状況も踏まえ、歴史的事実を正確に理解することが重要です。

もう一度検索