山川幸世

山川 幸世の人物像と経歴

山川幸世（やまかわ ゆきよ）は、1904年3月23日に京都で生まれた日本の演出家です。彼は著名なドイツ文学者である山川幸雄の長男で、妹に山川彌千枝を持ちます。幼少期に父の転勤で東京に移り住んだ後、同志社大学の英文科を卒業します。彼はその後、舞台演出に身を投じ、俳優の育成にも関わりながら、音声学においても実践的なアプローチを行いました。なお、彼の実子にはモンゴル音楽祭などに取り組む山川泉がいます。

経歴の始まり

1928年、山川は大学を卒業し、築地小劇場附属劇団の演出部に研究生として入団しました。その翌年には、劇団の機関誌『築地小劇場』に自身の戯曲翻訳を発表するなど、早くからその才能を示します。彼は1930年に東京左翼劇場に移籍し、この時期、松竹キネマの女優長谷川泰子との間に子どもをもうけ、中原中也が名付け親となるという個人的な出来事も経験します。

社会運動と演劇の関わり

1931年から1933年にかけて、彼は労働運動と強く結びつき、非公然の活動を続けました。しかし、1933年2月には京橋署に検挙されます。保釈後には演劇界に復帰しましたが、所属していた左翼劇場は解散し、山田耕筰が設立した日本楽劇協会内のグループ金曜会に関心を寄せるようになります。

新築地劇団と新劇事件

1936年、山川は新築地劇団に入団しますが、1940年には内紛により脱退します。同年には、彼が所属していた「新協劇団」や「新築地劇団」が一斉に検挙される新劇事件に巻き込まれ、警察署に留置された後、巣鴨拘置所に移送される不運な経験を味わうことになります。

戦後の復帰と教育への貢献

1941年12月、開戦直後に保釈を受けた山川は、東方社にて対外宣伝誌『FRONT』の編集に従事します。1946年には演劇の仕事に復帰し、1948年には舞台芸術学院の設立に関与し、後に教授として若者の教育にも力を注ぎました。

研究と出版活動

1950年には、音声学に関する著書『日本音声学の実際』を出版し、さらに1950年から1951年にかけては『現代演劇論大系』全8巻（五月書房）の編集に携わります。このように、彼は演劇の枠を超えた学問的な貢献も行ってきました。

晩年と業績

山川幸世は1974年に心不全で亡くなるまで、演劇界において多方面で活動を続けました。彼の業績は後に1981年に発表された『ある演劇人の軌跡』（未來社）としてまとめられ、演劇史において重要な位置を占める人物として記憶されています。彼の影響は今なお多くの演劇人に引き継がれており、その教えは演劇を志す若き才能たちにとっての道しるべとなっています。

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