山本清治

山本清治：伝説の競輪選手「ヤマセイ」

山本清治（やまもとせいじ）は、1930年（昭和5年）9月26日生まれの元競輪選手です。熊本県出身で、熊本県立熊本商業学校（現・熊本県立熊本商業高等学校）を卒業後、競輪の世界に飛び込みました。

1949年 2月1日に競輪選手登録を済ませ、登録番号は309。選手時代は「ヤマセイ」の愛称で親しまれました。なお、同姓同名の競輪選手がいますが、別人です。

大阪を拠点とした理由

熊本県出身の山本が登録地を大阪としたのは、当時の競輪界において、大阪が自転車産業の中心地であり、多くの有力選手が集まっていたからです。山本は、大阪でトップクラスの選手たちと切磋琢磨することで、自身の成長を加速させようと考えました。特に、第1回全国争覇競輪（現・日本選手権[[競輪]]）優勝者の横田隆雄を目標とし、日々練習に励んだそうです。

また、選手登録当時、山本は熊本商業の生徒でもありましたが、学校の許可を得て競輪競走にも参加するという、異例の二足のわらじを履いていたというエピソードも残っています。

「ヤマセイの燕返し」

山本は、後方から直線に入って驚異的な伸びを見せることから、「ヤマセイの燕返し」という異名で呼ばれていました。これは、名剣士・佐々木小次郎の必殺技「燕返し」になぞらえたもので、その驚異的なスピードは、後に井上茂徳のニックネームとなる「鬼脚」を彷彿とさせるものでした。

この「ヤマセイの燕返し」に対抗したのが、埼玉の高倉登の「超」地脚先行です。高倉は、自ら先頭を走りながらも逃げ切るという驚異的なレースを何度も見せましたが、山本は、その高倉に唯一対抗できる選手だったと言われています。1951年には、山本と高倉の2人が特別競輪のタイトルをほぼ分け合ったことからも、その実力が伺えます。

初物に強い

山本は、数々のビッグレースで優勝していますが、特に、高松宮杯競輪と競輪祭競輪王戦という2つのGI大会で初代優勝者となっていることは特筆すべきでしょう。さらに、全国都道府県選抜競輪の4000メートル競走でも初代優勝者となっています。

ヤマセイ日記

山本は、デビュー当時から日記を書き続けており、その内容は「ヤマセイ日記」としてマスコミにも紹介されました。日記には、自身の引退時期を逆算して、残りの競輪選手生活をどのように過ごすかという内容が多く書かれていたそうです。山本は、競輪選手としての人生を人生の通過点と捉え、その中で自分の持てる力を最大限に発揮しようと考えていました。この山本の考え方は、後に引退した福島正幸や中野浩一にも通じるところがあり、日記は引退後も多くの競輪関係記事で取り上げられています。

引退について

山本は、当初28歳で引退を考えていましたが、実際には31歳で引退しました。これは、28歳の時点で、まだ現役として戦えるという思いがあったからで、日記にもその心境が綴られています。引退は、1961年11月の大阪住之江競輪場の開催をもって行われました。引退後、スピードチャンネルで、ヘルシンキ五輪でのフランシナ・ブランカース＝クン夫人の惨敗を見て、無敵の勝者にも衰える日が来る、そうなる前にやめたい、という日記の一節を自ら語り、早い引退に至った心境を明かしました。

初代ミスター競輪

山本は、「初代ミスター競輪」と呼ばれることもあります。一時は通算勝率が5割を超え、「ヤマセイから買えば当たる」とファンから厚い信頼を得ていました。

通算成績は1290戦609勝、2着266回。通算勝率は47.2%、連対率は67.8%です。これは、ほとんどがトップクラス同士の戦いでの成績であり、2代目ミスター競輪と呼ばれる中野浩一の勝率53.9%、連対率71.8%に次ぐもので、吉岡稔真の勝率45.8%、連対率56.5%を上回ります。山本は、新人時代からトップクラスに君臨し、その地位を維持したまま引退した名選手でした。

引退後は事業家に転身し、競輪に関わることは少なかったものの、1995年に日本名輪会が創設されるとメンバーとなり、各種イベントに姿を見せるようになりました。2011年からは、岸和田[[競輪場]]で、山本の功績を称える「ヤマセイ杯」が開催されています。

主な獲得タイトルと記録

1950年：全国争覇競輪・競走車部門、高松宮賜杯競輪（初代優勝者）
1951年：高松宮賜杯競輪、競輪祭競輪王戦（初代優勝者）
1953年：第5回全国都道府県選抜競輪（4000m）
1954年：第6回全国都道府県選抜競輪（4000m）
1959年：高松宮賜杯競輪
年間賞金王：2回（1953年、1959年）

山本清治は、その卓越した技術とレーススタイルで、競輪界に大きな足跡を残しました。彼の功績は、今も多くの人々に語り継がれています。

外部リンク

山本清治氏の戦歴と逸話　　　井上和巳（元デイリースポーツ記者）