山脇房子

山脇房子（やまわき ふさこ）は、1867年（慶応3年）に出雲国松江で生まれ、日本の教育者として名を馳せました。旧姓は小倉で、夫は法学者であり女子実脩学校（後の山脇高等女学校）の創立者である山脇玄です。

生涯

松江藩士の娘として生まれた房子は、1883年に松江女子師範学校を卒業後、アメリカ人宣教師夫妻の元で英語を学びました。その後、上京し、イギリス人教師のもとで経済学や文学を修めた後、カロライン・カルクス宣教師のもとで英語や洋風作法を学びました。

1894年、山脇玄と結婚し、1903年には夫が設立した女子実脩学校の初代校長に就任しました。1908年には学校を山脇高等女学校へと発展させ、その後も大日本婦人教育会理事、大日本連合女子青年団理事長、大正婦人会理事などを務め、女子教育の発展に大きく貢献しました。また、婦人同志会を創立するなど、女性の地位向上にも尽力しました。

房子の活動は教育分野にとどまらず、社会事業にも積極的に関わりました。1928年の叙勲の際に、「女子教育への貢献以上に社会事業への関与が評価されたのではないか」と語ったように、その活動は多岐にわたりました。

1935年11月19日に69歳で亡くなり、青山霊園に眠っています。

社会事業への貢献

山脇房子は、教育活動と並行して、様々な社会事業にも力を注ぎました。

少女衣服改良会設立: 1900年、鳩山春子、濱尾作子、下田歌子、三輪田真佐子らと共に、少女衣服改良会を設立し、女性の服装改革を推進しました。
鉱毒地救済婦人会設立: 1901年、足尾鉱毒事件の被害者救済のため、潮田千勢子、矢島楫子、三輪田真佐子らと鉱毒地救済婦人会を設立し、被害者の救済に尽力しました。
東洋婦人会設立: 1903年、清藤秋子らと東洋婦人会を設立し、井口阿くり、安井てつらと共に理事を務め、女性の社会参加を促進しました。
東北凶作窮民地救済婦人会組織: 1906年、東北地方の飢饉で困窮する人々を救済するために、東北凶作窮民地救済婦人会を組織し、食料や物資の支援を行いました。
日本婦人白国同情会創設: 1915年、津田梅子、桜田節弥らと共に日本婦人白国同情会を創設し、第一次世界大戦で発生したベルギー難民への支援活動を行いました。
大正婦人会設立: 1917年、大正婦人会を設立し、労働者のための託児所を運営するなど、社会福祉事業を展開しました。
処女会中央部設立: 1917年、吉岡彌生、国府犀東、天野藤男、福島四郎らと処女会中央部を設立し、女性の社会活動を支援しました。
大日本連合女子青年団発会: 1927年、処女会中央部が解散した後、大日本連合女子青年団を発足させ、初代理事長として女性の育成に尽力しました。
婦人同志会結成: 1930年、吉岡彌生、井上秀らと婦人同志会（穏健派婦選団体）を結成し、女性参政権運動を推進しました。

栄典

その功績が認められ、山脇房子は数々の栄典を授与されました。

1915年、勲五等宝冠章を授与。
1927年、ドイツ政府より赤十字第二等名誉章、ベルギー政府よりエリザベート勲章を授与。
1928年、勲四等瑞宝章を授与。

親族

夫は法学者で行政裁判所長官、貴族院議員を務めた山脇玄であり、養子に農商務・内務官僚で山脇高等女学校校長の山脇春樹がいます。長女の春二は春樹の妻であり、次女の初音は荘司市太郎の妻です。

主な著書

山脇房子は、自身の経験や思想をまとめた著書も発表しました。

『無駄なき生活』(1916年)
『処女より主婦となる迄』(1926年、吉岡彌生・嘉悦孝との共著)
『若き女子の為めに』(1926年、吉岡彌生・嘉悦孝との共著)
『若き女性に贈る』(1934年)
* 『黄金の釘を打て : 詩歌に現はれたる女性訓』(1934年)

山脇房子は、教育者として、また社会活動家として、日本の女性の地位向上に多大な貢献をした人物です。彼女の遺志は、山脇学園中学校・高等学校に受け継がれています。

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