山辺丈夫

山辺丈夫（やまのべ たけお）

山辺丈夫は、嘉永4年12月8日（1851年12月30日）に生まれ、大正9年5月14日（1920年）に没した、明治時代の実業家、紡績技師であり、津和野藩士でした。彼は東洋紡（現在の東洋紡績）の創業者として知られ、従五位に叙せられました。

生い立ちと教育

嘉永4年（1851年）、石見国津和野城下の森町堀内にて、津和野藩の大目付であった清水格亮の次男として誕生。幼名は虎槌または善蔵と名付けられ、後に丈夫と改名しました。4歳の時、同藩士の山辺正義の養子となります。

津和野藩の藩校である養老館で学んだ後、明治3年（1870年）には藩の奨学制度により文学修行のため上京。当初は同藩出身の福羽美静が主宰する培達塾で学びましたが、洋学を志していたため、西周の育英舎や中村敬宇の英学同人舎に移り、英語や洋学を学びました。

実業家としての道

明治6年（1873年）、22歳の時に大阪に移り、小学校の教員を1年間務めました。また、同年から大阪慶應義塾に学びます。翌明治7年（1874年）には東京に戻り、再び西周の塾（育英舎）に入り英語を学ぶ傍ら、旧津和野藩主の養子である亀井茲明に英語を教えました。その後、育英舎や慶應義塾で教鞭を執りました。

明治10年（1877年）、亀井茲明のイギリス留学が決まると、茲明に英語を教えていた縁から山辺も随行者に選ばれ、共に渡英。ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドンで経済学や保険学を学びました。同時期、渋沢栄一らによる民間の紡績工場設立計画が持ち上がり、その実務担当者が求められていました。山辺はこれを知り、自ら担当者になることを申し出て、機械工学を学ぶため、明治12年（1879年）にロンドン市内のキングス・カレッジ・ロンドンに入学しました。その後、渋沢栄一からの資金援助を受け、マンチェスターで工場見学や技師としての実務を経験し、製造品の組み立て方法などを研究しました。

明治13年（1880年）、亀井茲明と共に帰国。イギリスの紡績機械や蒸気機関などを買い付けました。

大阪紡績会社

明治15年（1882年）には、松本重太郎や渋沢栄一らと共に、日本初の組織的紡績工場である大阪紡績会社（現在の東洋紡の前身）を設立し、工務支配人に就任。明治31年（1898年）には社長に就任しました。明治33年（1900年）には大日本綿糸紡績同業連合会委員長、大阪商業会議所特別委員を歴任しました。

大正9年（1920年）、須磨の自宅で生涯を終えました。

山辺丈夫は、日本の近代化に大きく貢献した人物として、その功績は今日でも高く評価されています。

参考文献

慶應義塾史事典編集委員会編 編『慶應義塾史事典』慶應義塾大学出版会、2008年11月。ISBN 978-4-7664-1572-8。
山岡浩二『明治の津和野人たち～幕末・維新を生き延びた小藩の物語』2018年5月。

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