山風 (白露型駆逐艦)

駆逐艦「山風」について

概要

「山風」は、旧日本海軍の白露型駆逐艦の8番艦として建造されました。白露型駆逐艦は、当時の日本海軍の主力駆逐艦であり、「山風」はその中でも特に重要な役割を担っていました。太平洋戦争開戦当初から多くの作戦に参加し、その短い生涯の中で数々の激戦を経験しました。

艦歴

建造から太平洋戦争開戦まで

1934年11月24日、「山風」は浦賀船渠で建造されることが決定し、同日に艦名が与えられました。1935年5月25日に起工、1936年2月21日に進水し、1937年6月30日に竣工しました。竣工後は佐世保鎮守府に所属し、姉妹艦である「江風」「涼風」「海風」とともに第24駆逐隊を編成しました。

「山風」は、竣工直後から実戦に参加しました。1937年には第二次上海事変に出動し、中国大陸沿岸での作戦を支援しました。その後、第一水雷戦隊に編入され、南京攻略戦にも従事しました。

1941年2月には訓練中に僚艦「涼風」と衝突し、艦首を損傷する事故もありましたが、修理後、再び戦列に復帰しています。また、同型艦の「嵐」との間で郵便物の誤配が多発したというエピソードも残っています。

太平洋戦争

太平洋戦争開戦後、「山風」は南方作戦に参加し、フィリピン攻略戦や蘭印作戦に従事しました。1942年1月にはタラカン攻略作戦でオランダ軍の機雷敷設艦を撃沈し、スラバヤ沖海戦にも参加するなど、数々の作戦で活躍しました。

スラバヤ沖海戦

スラバヤ沖海戦では、第五戦隊に所属し、連合国軍艦隊と交戦しました。この海戦では、僚艦と共に敵艦艇への雷撃や砲撃を行い、イギリスの重巡洋艦「エクセター」の撃沈に貢献しました。また、戦闘後には多くの生存者を救助し、その人道的な一面も見せました。

ミッドウェー海戦

ミッドウェー海戦では、主力部隊の護衛として参加しました。しかし、この海戦での日本軍の敗北により戦局は大きく転換しました。

沈没

ミッドウェー海戦後の1942年6月23日、「山風」は横須賀から大湊へ向かう途中で、米潜水艦ノーチラスの雷撃を受け、東京湾沖で沈没しました。乗組員全員が戦死し、「山風」の短い艦歴は幕を閉じました。

歴代艦長

「山風」の歴代艦長は以下の通りです。

艤装員長：野間口兼知 少佐
初代艦長：野間口兼知 少佐
二代目艦長：吉川潔 少佐
三代目艦長：豊島俊一 少佐
四代目艦長：浜中脩一 少佐/中佐（戦死後、大佐に特進）

まとめ

駆逐艦「山風」は、その短い艦歴の中で、多くの戦いに参加し、数々の武勲を立てました。しかし、太平洋戦争の激化とともに、その姿を海に消しました。その勇戦と悲劇は、今もなお語り継がれています。

「山風」は、太平洋戦争初期の日本海軍を支えた駆逐艦の一隻として、その名を歴史に刻んでいます。

参考資料

木俣滋郎『日本水雷戦史』図書出版社、1986年3月。
木俣滋郎・永井喜之「第2部　第二次大戦/太平洋編(3)オランダ敷設艦・プリンス・バン・オラーニュ」『新戦史シリーズ　撃沈戦記・PARTⅢ』朝日ソノラマ、1991年9月。ISBN 4-257-17242-8。
木俣滋郎『連合軍艦艇撃沈す　日本海軍が沈めた艦船21隻の航跡』光人社〈光人社NF文庫〉、2013年8月。ISBN 978-4-7698-2794-8。
木俣滋郎『潜水艦攻撃　日本軍が撃沈破した連合軍潜水艦』潮書房光人社〈光人社NF文庫〉、2016年5月（原著1989年）。ISBN 978-4-7698-2949-2。
重本俊一ほか『陽炎型駆逐艦　水雷戦隊の中核となった精鋭たちの実力と奮戦』潮書房光人社、2014年10月。ISBN 978-4-7698-1577-8。
外山操『艦長たちの軍艦史』光人社、2005年。ISBN 4-7698-1246-9
橋本衛『特型駆逐艦「雷」海戦記　一砲術員の見た戦場の実相』潮書房光人社〈光人社NF文庫〉、2014年8月（原著1984年）。ISBN 978-4-7698-2255-4。
防衛庁防衛研修所戦史室『戦史叢書』各巻
雑誌『丸』編集部 編『写真 日本の軍艦』各巻
* アジア歴史資料センター（公式）（防衛省防衛研究所）各種資料

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