岡崎電気軌道100形電車

岡崎電気軌道100形電車の歴史と特徴

岡崎電気軌道100形電車は、名古屋鉄道の前身である岡崎電気軌道が1923年に導入した路面電車の一種です。この車両は、岡崎市内での交通網の拡充に寄与し、特に市内線の運行に重要な役割を果たしました。100形は木造で、四軸ボギー構造の特徴を持っており、その製造は名古屋電気製作所によって行われ、12メートル級のダブルルーフ車体を特徴としています。

この車両は、当初の8メートル級二軸単車に比べて大幅に定員が増加しました。定員は70名、座席数は22名という輸送力を誇り、岡崎市内線では数少ない大型車両でもありました。窓の設置も工夫されており、前面に3枚、側面にも12枚と、車両内部の採光を良好に保つ設計になっています。特に、側面の窓配置は「V 2 2 2 2 2 2 V」となっており、特有のデザインを誇ります。

また、前面中央窓の下には前照灯が装備されており、上部には方向幕が取り付けられています。最初の状態では乗降口はオープンデッキでしたが、後に扉が取り付けられました。この改良により、利便性が向上し、安全性も高まりました。

機械構造と運用

台車にはブリル製の76-E1が使用されており、車両下部にはトラス棒が配置されています。優れた通気性を考慮し、空調設備としてトルペード形ベンチレーターがダブルルーフの箇所に装備され、左右にそれぞれ5基設置されています。強力な走行性能を発揮するために、主電動機にはシーメンス製のD561（50馬力）が2基搭載されており、制御装置はOA-6直接制御器が用いられています。

制動装置の種類も豊富で、ウェスティングハウス・エレクトリック製のSM-3直通空気ブレーキが新たに追加され、通常の手ブレーキに加えて、更なる安全性が保証されています。集電装置にはトロリーポールを用いていましたが、後にビューゲルに変更されました。

この100形電車は、もっぱら福岡町駅と大樹寺駅の間での直通運用に利用され、特に朝夕のラッシュ時には、その大きな輸送力によって多くの利用者に支持されました。しかし、1962年には岡崎市内線が廃止され、100形は岐阜市内線に転属するも、ほとんど運用されることはなく、翌年に廃車となり解体されてしまいました。

結論

岡崎電気軌道100形電車は、設計面でも運用面でもその時代のニーズに応えた素晴らしい車両でした。その後の名古屋鉄道の発展に寄与したことからも、公共交通機関の重要な存在であったことが伺えます。名鉄合併後もモ530形として新たな名称を得、歴史の中で特別な位置を占め続けたこれらの電車は、今も多くの鉄道ファンに愛されています。

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