岡本忠成
岡本忠成（1932-1990）は、日本の初期アニメーション界において極めて重要な役割を果たしたアニメーション作家です。持永只仁、川本喜八郎といった先駆者たちと共に、日本のアニメーション表現の基礎を築き、その後の発展に多大な貢献をした人物として、「アニメーションの神様」の一人として今なお尊敬を集めています。私生活では、妻は人形作家の森田さと子氏、長男はブックデザイナーの岡本洋平氏であり、義弟にはイタリア美術研究者の森田義之氏がいます。
異色の経歴からアニメーションの世界へ
岡本氏は大阪府豊中市に生まれ、大阪大学法学部を卒業後、一般企業に勤めるというユニークな経歴を持っています。しかし、チェコアニメーション、特にイジー・トルンカの作品に深く感銘を受け、アニメーション制作への情熱を抑えきれず会社を退職。日本大学芸術学部映画学科に編入学し、この分野で本格的に学ぶ道を選びました。卒業後、1961年には持永只仁氏率いるMOMプロダクションに入社し、アニメーション撮影技術を磨きます。そして1964年、自身の制作活動の拠点として株式会社エコーを設立し、フリーランスとして独立しました。
初期の成功と評価
独立後まもなく、SF作家・星新一氏の短編小説を原作とした2作品に取り組みました。1965年の『ふしぎなくすり』、そして翌1966年の『ようこそ宇宙人』です。これらの作品は岡本氏の名を一躍広めることとなります。『ふしぎなくすり』で毎日映画コンクール大藤信郎賞を受賞し、『ようこそ宇宙人』ではイタリアのヴェネツィア国際児童映画祭で銀賞を獲得するとともに、二度目の大藤信郎賞に輝き、国内外から高い評価を得ました。
活動の広がりと盟友との連携
1971年には自身の作品の個人上映会を開催。1972年には芸術選奨新人賞を受賞するなど、その活動は着実に広がりを見せます。この芸術選奨受賞を契機に、翌1973年からは盟友である川本喜八郎氏と共同で作品上映会「パペットアニメーショウ」を定期的に開催するようになります。この上映会は途中中断を挟みながらも、1980年の第6回まで続き、多くのアニメーションファンに愛されました。また、岡本氏は脚本や演出面でもその才能を発揮し、1971年制作の『チコタン ぼくのおよめさん』では、原曲の持つ衝撃的な内容を、これまでのアニメーションでは見られなかった大胆かつ印象的な演出で表現し、大きな話題を呼びました。
多様な作品と代表作
岡本氏はその後も精力的に制作を続け、様々な素材や技法を用いた秀逸な作品を多数生み出しました。特に、1982年に制作された人形アニメーション『おこんじょうるり』は、彼の代表作の一つとして非常に高く評価されています。さねとうあきら氏の絵本が原作ですが、作中に浄瑠璃の歌唱シーンを大胆に挿入するなど、原作にはない岡本氏独自の創作と演出が冴えわたる傑作として知られ、当時『セロ弾きのゴーシュ』を制作していた高畑勲監督にも大きな影響を与えたと言われています。また、1984年にはNHKの「みんなのうた」で放送された大貫妙子氏の楽曲『メトロポリタン美術館』の人形アニメーション演出を担当。歌詞とメロディーに合わせて創り出された不思議な世界観は視聴者を魅了し、こちらも多くの人々の記憶に残る作品となりました。
独自の作風と技法への探求
エコー社設立後の1965年から1990年までの制作期間を通じ、岡本氏は「同じことは二度行わない」という強い信条のもと、常に新しい表現を追求しました。中篇では昔話や星新一のショート・ショートといった物語を主軸に、短篇では音楽や歌の世界をアニメーション化するなど、題材は多岐にわたります。技術面ではストップモーション撮影技法に特に秀でており、人形アニメーションを数多く手掛けましたが、立体人形、半立体人形、セル画など、多様な素材を用いた美術制作全般を得意とし、それらを組み合わせるなど、技法的な挑戦も決して怠りませんでした。個人的な趣味としては絵画、特に油絵を愛好していたと言われています。また、誕生日が同じ川本喜八郎氏とは、盟友であると同時に互いを高め合うライバルでもありました。
突然の逝去、そして遺作
1989年からは、宮沢賢治原作のセルアニメーション『注文の多い料理店』の脚本・演出を手掛けていましたが、1990年に入って体調が急激に悪化。長年の愛飲家であったことが原因とされる肝硬変から肝臓がんを患い、同年2月16日に58歳で急逝しました。晩年は病を押して制作を続けていた最中の出来事でした。岡本氏の遺作となった『注文の多い料理店』は、盟友である川本喜八郎氏が監修を引き継ぎ、1991年に完成に至りました。期せずして岡本氏と川本氏がタッグを組む形となったこの作品は、公開当時大きな注目を集め、制作には長男の洋平氏も関わっています。短い生涯ながらも、岡本忠成氏が日本のアニメーション界に残した功績と影響は計り知れません。
異色の経歴からアニメーションの世界へ
岡本氏は大阪府豊中市に生まれ、大阪大学法学部を卒業後、一般企業に勤めるというユニークな経歴を持っています。しかし、チェコアニメーション、特にイジー・トルンカの作品に深く感銘を受け、アニメーション制作への情熱を抑えきれず会社を退職。日本大学芸術学部映画学科に編入学し、この分野で本格的に学ぶ道を選びました。卒業後、1961年には持永只仁氏率いるMOMプロダクションに入社し、アニメーション撮影技術を磨きます。そして1964年、自身の制作活動の拠点として株式会社エコーを設立し、フリーランスとして独立しました。
初期の成功と評価
独立後まもなく、SF作家・星新一氏の短編小説を原作とした2作品に取り組みました。1965年の『ふしぎなくすり』、そして翌1966年の『ようこそ宇宙人』です。これらの作品は岡本氏の名を一躍広めることとなります。『ふしぎなくすり』で毎日映画コンクール大藤信郎賞を受賞し、『ようこそ宇宙人』ではイタリアのヴェネツィア国際児童映画祭で銀賞を獲得するとともに、二度目の大藤信郎賞に輝き、国内外から高い評価を得ました。
活動の広がりと盟友との連携
1971年には自身の作品の個人上映会を開催。1972年には芸術選奨新人賞を受賞するなど、その活動は着実に広がりを見せます。この芸術選奨受賞を契機に、翌1973年からは盟友である川本喜八郎氏と共同で作品上映会「パペットアニメーショウ」を定期的に開催するようになります。この上映会は途中中断を挟みながらも、1980年の第6回まで続き、多くのアニメーションファンに愛されました。また、岡本氏は脚本や演出面でもその才能を発揮し、1971年制作の『チコタン ぼくのおよめさん』では、原曲の持つ衝撃的な内容を、これまでのアニメーションでは見られなかった大胆かつ印象的な演出で表現し、大きな話題を呼びました。
多様な作品と代表作
岡本氏はその後も精力的に制作を続け、様々な素材や技法を用いた秀逸な作品を多数生み出しました。特に、1982年に制作された人形アニメーション『おこんじょうるり』は、彼の代表作の一つとして非常に高く評価されています。さねとうあきら氏の絵本が原作ですが、作中に浄瑠璃の歌唱シーンを大胆に挿入するなど、原作にはない岡本氏独自の創作と演出が冴えわたる傑作として知られ、当時『セロ弾きのゴーシュ』を制作していた高畑勲監督にも大きな影響を与えたと言われています。また、1984年にはNHKの「みんなのうた」で放送された大貫妙子氏の楽曲『メトロポリタン美術館』の人形アニメーション演出を担当。歌詞とメロディーに合わせて創り出された不思議な世界観は視聴者を魅了し、こちらも多くの人々の記憶に残る作品となりました。
独自の作風と技法への探求
エコー社設立後の1965年から1990年までの制作期間を通じ、岡本氏は「同じことは二度行わない」という強い信条のもと、常に新しい表現を追求しました。中篇では昔話や星新一のショート・ショートといった物語を主軸に、短篇では音楽や歌の世界をアニメーション化するなど、題材は多岐にわたります。技術面ではストップモーション撮影技法に特に秀でており、人形アニメーションを数多く手掛けましたが、立体人形、半立体人形、セル画など、多様な素材を用いた美術制作全般を得意とし、それらを組み合わせるなど、技法的な挑戦も決して怠りませんでした。個人的な趣味としては絵画、特に油絵を愛好していたと言われています。また、誕生日が同じ川本喜八郎氏とは、盟友であると同時に互いを高め合うライバルでもありました。
突然の逝去、そして遺作
1989年からは、宮沢賢治原作のセルアニメーション『注文の多い料理店』の脚本・演出を手掛けていましたが、1990年に入って体調が急激に悪化。長年の愛飲家であったことが原因とされる肝硬変から肝臓がんを患い、同年2月16日に58歳で急逝しました。晩年は病を押して制作を続けていた最中の出来事でした。岡本氏の遺作となった『注文の多い料理店』は、盟友である川本喜八郎氏が監修を引き継ぎ、1991年に完成に至りました。期せずして岡本氏と川本氏がタッグを組む形となったこの作品は、公開当時大きな注目を集め、制作には長男の洋平氏も関わっています。短い生涯ながらも、岡本忠成氏が日本のアニメーション界に残した功績と影響は計り知れません。
もう一度検索
【記事の利用について】
タイトルと記事文章は、記事のあるページにリンクを張っていただければ、無料で利用できます。
※画像は、利用できませんのでご注意ください。
【リンクついて】
リンクフリーです。