岡本経一

岡本経一 - 日本の出版人の軌跡

岡本経一（おかもと きょういち、1909年3月25日 - 2010年11月15日）は、日本の出版界に名を刻んだ著名な出版人です。彼は岡本綺堂の養子であり、青蛙堂書房の創業者として知られています。

幼少期と教育

岡本経一は岡山県勝田郡勝間田町で生まれ、旧姓は森部です。彼は13歳のときに上京し、1924年には作家・岡本綺堂の書生として彼の下で学びます。このころから彼は文学の世界に深く関わり始め、法政大学の夜学に通い専検を取得しました。1930年には法政大学高等師範科を卒業し、文学の道を進むための下地を固めました。

出版のキャリア

卒業後、就職がうまくいなかった岡本は、綺堂監修の戯曲専門誌『舞台』の編集を手伝いながら、次第に出版に関わる業務を増やしていきます。その後、三上於菟吉と改造社の編集者・塩谷晴如が設立した出版社「サイレン社」に移り、長谷川時雨の著作に取り組みます。しかし、同社の経営が悪化し、岡本はその後始末を余儀なくされます。

1937年、岡本は経済的に困窮していたところを綺堂に養子とされます。1939年に綺堂が亡くなると、岡本は大東出版社に勤務し、主に一般書の編集を担当しました。戦中は応召され、戦後はソ連に抑留されるなどの厳しい経験を経て、1947年に復員します。

青蛙堂書房の創業

戦後、岡本は青蛙堂書房を設立しました。この社名は綺堂の作品『青蛙堂鬼談』に由来していますが、設立からまもなく経営が難しくなり倒産してしまいました。しかし、1955年に青蛙房として再建しました。この再建後、岡本は岡本綺堂や三田村鳶魚をはじめとする多くの著作物を出版し、さらに活躍の場を広げます。特に、江戸時代の文化に関する出版物は評価され、1967年度の菊池寛賞を受賞しました。

岡本綺堂への関与

岡本経一は、養父である岡本綺堂に関する資料を編纂し、『岡本綺堂日記』（1987年）の出版など、多岐にわたる文献の刊行に関与しました。また、綺堂作品の解説なども多く手がけ、文庫版などでもその文才を発揮しました。特に、2009年には岡本綺堂百歳記念として多くの資料が整理され、綺堂の作品に新たな光が当てられました。

晩年と影響

1990年、岡本は出版業界から引退し、社業は息子である岡本修一に譲ります。岡本経一は、2010年11月15日に急性心筋梗塞で亡くなるまで、102年の生涯を全うしました。

没後の評価

岡本の故郷である勝央町には「勝央美術文学館」があり、彼の功績をたたえる「青蛙房、岡本経一の仕事」というコーナーが存在します。彼が創業した青蛙房は2018年に2代目が亡くなるとともに2019年末に閉業しましたが、その在庫は全て八木書店に引き継がれました。

著書と受賞歴

彼の重要な著作には、『綺堂年代記』（1951）、『私のあとがき帖』（1980）、『「半七捕物帳」解説』（2009）などがあります。また、彼は菊池寛賞や長谷川伸賞を受賞し、出版界での大きな貢献が評価されています。

岡本経一の影響は、今もなお日本の出版界で感じられ、多くの人々にその業績が語り継がれています。

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