岡田完二郎

岡田完二郎

岡田完二郎（1891年10月24日 - 1972年9月9日）は、三重県出身の実業家であり、古河鉱業の社長、宇部興産の副社長、そして富士通の社長を歴任しました。彼は特に富士通において、国産コンピュータ事業の育成に尽力し、今日の富士通の基礎を築いた人物として知られています。そのため、彼は俗に『富士通中興の祖』と呼ばれています。父は百五銀行常務取締役を務めた岡田藤吉です。

経歴

1913年、岡田は東京高等商業学校（現在の一橋大学）を卒業後、古河合名會社に入社しました。1925年には如水会の理事に就任しています。1944年には古河鉱業の代表取締役常務に昇進し、翌1945年には同社の代表取締役社長に就任しました。古河財閥の中核企業である古河鉱業において、古河家と血縁関係がない人物が社長に就任したのは、岡田が初のケースでした。しかし、GHQによる経済人追放により、1947年に古河を去ることになります。

1947年4月、岡田は宇部興産に東京支社長として迎えられ、同社の常務取締役、専務取締役、代表取締役副社長を歴任しました。宇部興産在任中は労務担当役員としての本業の他に、当時の社長であった俵田明らと共に、宇部ロータリークラブや宇部ユネスコ協会の発足にも尽力しました。1948年には、第2次吉田内閣の石炭庁長官への起用が有力視されましたが、宇部興産に迎え入れてくれた俵田への恩義を理由に、この起用を辞退しています。1955年には経済審議会専門委員に就任。1958年に俵田が亡くなったため、岡田自身も副社長を退任し、宇部興産を去りました。

1959年、68歳にして古巣である古河グループの企業、富士通信機製造に入社し、直ちに同社の5代目代表取締役社長に就任しました。これは、当時富士電機と富士通信機製造の社長を兼務していた和田恒輔（古河合名時代に岡田と同僚）からの強い要請によるものでした。

富士通では、当時同社のコンピュータ開発の中核人物であった池田敏雄と深く関わり、国産コンピュータ事業を育成し、今日の富士通の基礎を築き上げました。当時の岡田の考え方について、富士通のコンピュータ開発で池田と並ぶ中核人物だった小林大祐は「重役が10人いたとして、3人が賛成なら『やれ』、5人が賛成なら『手遅れ』という考え方だった」と述べています。当時の富士通の会社規模では、コンピュータ事業への傾注は経営を揺るがしかねないものでしたが、岡田は当時通産省の電子工業課長補佐だった平松守彦らと協力し、通産省から多額の補助金を得て独自のコンピュータ開発を推し進めました。

1964年、三重県庁舎建設資金を寄付したことにより紺綬褒章を受章。1965年には一橋大学名誉教授の高垣寅次郎が会長を務める日本ユネスコ国内委員会委員に就任。同年、勲三等瑞宝章を受章しました。1966年には三重県立津高等学校建設費寄付により紺綬褒章飾版を受章。1970年に富士通会長を退任。1971年には勲二等瑞宝章を受章。1972年に正四位を追贈されました。

交友関係

一橋大学教授の中山伊知郎は東京高商の同窓であり、中山が厚生省中央労働委員会会長を務めていた間、岡田も同委員を務めていました。

参考文献

『岡田完二郎さんの思い出』,1973年,『岡田完二郎さんの思い出』編集委員会,中央公論事業出版
『企業革新と企業外部化戦略：富士電機・富士通・ファナック』,1991年,米倉誠一郎,一橋論叢第106巻

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