岡部通

岡部 通（おかべ とおる）は、1889年（明治22年）9月28日に東京府で生まれ、1961年（昭和36年）12月18日に亡くなった日本の陸軍軍人です。最終的な階級は陸軍少将でした。

岡部通の軍隊生活は、1911年（明治44年）5月に陸軍士官学校の第23期生として卒業したことから始まります。同年12月には歩兵少尉に任官し、歩兵科の将校としてキャリアを積み重ねていきました。昇進を重ねた後、1937年（昭和12年）3月には独立守備第8大隊長に就任します。これは日中戦争が本格化する直前の時期であり、中国大陸での任務に就きました。同年11月には歩兵大佐へと昇進し、指揮官としての責任ある立場を担うことになります。

1939年（昭和14年）3月には宇都宮連隊区司令官への異動が命じられました。これは、前線での部隊指揮から一旦離れ、国内において兵員の補充や後方支援に関する業務を管轄する役割です。しかし、1940年（昭和15年）10月には再び部隊指揮官として、歩兵第13連隊長に着任し、支那事変（日中戦争）の戦線へと赴きます。この連隊長として、彼は中国における主要な作戦の一つである第一次長沙作戦などに関与しました。激しい戦闘が繰り広げられる中で、部隊を指揮する重責を担いました。

1941年（昭和16年）8月、岡部通は陸軍少将に昇進し、将官となりました。これは彼の軍歴における大きな節目です。昇進の翌月、同年9月には第51歩兵団長に任命され、引き続き中国大陸の戦場で指揮を執りました。この時期は、太平洋戦争の開戦が迫り、日本が直面する国際情勢がさらに緊迫度を増している頃でした。

太平洋戦争が始まると、戦域の拡大に伴い、岡部少将も南方戦線へと転属となります。1942年（昭和17年）7月には第17軍の隷下に入り、ソロモン諸島方面へと派遣されました。この地域は、ガダルカナル島の戦いをはじめとして、日米両軍の激しい攻防が展開されていた場所です。その後、さらに第18軍の隷下へと移り、ニューギニア方面へと向かいました。ニューギニア戦線は、劣悪な自然環境と補給の途絶により、特に犠牲者が多かった過酷な戦場として知られています。彼はこの地で行われたラエ・サラモアの戦いにも従軍し、南方における絶望的な戦いを身をもって経験しました。

1943年（昭和18年）5月、岡部少将は東部軍附となり、南方戦線から日本本土への帰還を果たしました。その後は国内での任務に就き、1944年（昭和19年）2月には北海道の警備を担当する第32警備司令官に着任しました。戦局が厳しさを増す中で、本土防衛体制の一翼を担うことになります。終戦が間近に迫った1945年（昭和20年）3月には、独立混成第79旅団長に任命され、満州へと派遣されました。彼は満州国の安東（現在の中華人民共和国丹東市）において、日本の敗戦と終戦を迎えることとなりました。

第二次世界大戦終結後、日本を占領した連合国軍総司令部（GHQ）は、軍国主義に関与したとみなされる人物を公職から排除する方針を採りました。この公職追放の対象となり、岡部通も1948年（昭和23年）1月31日には公職追放の仮指定を受けています。

岡部通の生涯は、明治後半から昭和中期にかけての日本の軍事的動向、特に日中戦争や太平洋戦争における陸軍の軌跡を映し出すものであり、激動の時代を将校として生き抜いた一例と言えるでしょう。

彼の経歴は、福川秀樹著『日本陸軍将官辞典』（芙蓉書房出版）や、外山操編『陸海軍将官人事総覧 陸軍篇』（芙蓉書房出版）といった文献に記されています。

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