岩下壮一

岩下壮一の生涯と思想

岩下壮一（1889年9月18日 - 1940年12月3日）は、カトリック司祭であり、哲学者として、大正から昭和初期の日本カトリック教会において重要な役割を果たしました。彼の生涯は、信仰、学問、そして社会福祉への深い献身によって特徴づけられます。

生い立ちと教育

岩下壮一は、実業家で篤志家の父・岩下清周と華族出身でカトリック信者の母・幽香子の間に生まれました。幼少期に関節炎を患い右足に障害を負いましたが、暁星小学校から第一高等学校、そして東京帝国大学哲学科へと進学しました。中学時代にカトリックの洗礼を受け、フランシスコ・ザベリオという洗礼名を授かりました。大学院修了後には、旧制第七高等学校で教鞭を執りました。

ヨーロッパ留学と司祭への道

第一次世界大戦後、文部省の派遣留学生としてヨーロッパへ渡り、パリやルーヴァンで哲学を学びました。その後、ロンドンで神学校に入り、ローマなどで神学を修め、1925年にヴェネチアでカトリック司祭となりました。帰国後は、司牧、宣教、学究活動に励むとともに、ハンセン病患者の救済活動にも尽力しました。

社会活動と福祉への貢献

岩下壮一は、1930年から1940年まで神山復生病院の院長を務め、ハンセン病患者の治療と福祉に尽くしました。また、公教青年会を設立し、月刊誌『カトリック』や『公教青年時報』（現在のカトリック新聞の前身）を創刊するなど、出版活動を通じてカトリックの教えを広めました。さらに、学生生活指導のために聖フィリッポ寮を設立し、これが現在の財団法人真生会館の始まりとなりました。

晩年と死

1940年、神山復生病院院長を辞任し、興亜院の要請で華北地方を巡行中に病を発症し、帰国直後に亡くなりました。彼の墓は、彼が設立に深く関わった不二聖心女子学院中学校・高等学校内にあります。

著作と業績

岩下壮一は、数多くの著作を残しました。主なものとして、『愛と理性と戦争』、『アウグスチヌス 神の国』、『信仰の遺産』、『中世哲学思想史研究』などがあります。これらの著作は、彼の深い哲学的な思索と信仰への情熱を示すものです。

影響と遺産

岩下壮一は、日本のカトリック教会における精神的な指導者として、また社会福祉の先駆者として、多くの人々に影響を与えました。彼のハンセン病患者への献身的な活動は、その後の社会福祉活動のモデルとなり、彼の思想と著作は現代においても高く評価されています。

関連人物・施設

岩下壮一と交流のあったハンナ・リデルや、彼が院長を務めた神山復生病院は、彼の活動を語る上で欠かせない存在です。

参考文献

小林珍雄 『岩下神父の生涯』
重兼芳子 『闇をてらす足おと - 岩下壮一と神山復生病院物語』
* 輪倉一広『司祭平服（スータン）と癩菌 - 岩下壮一の生涯と救癩思想』

岩下壮一の生涯は、信仰、学問、社会貢献が深く結びついたものであり、その足跡は現代においても多くの人々に感銘を与え続けています。

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