岩田義道

岩田義道の生涯とその影響

岩田 義道（いわた よしみち、1898年4月1日 - 1932年11月3日）は、日本の労働運動や社会運動に尽力した政治活動家であり、日本共産党の重要な幹部として名を馳せました。彼は愛知県の北方村（現在の一宮市）に生まれ、高等学校を卒業後、京都帝国大学経済学部に入学します。ここで彼は、当時の著名な経済学者 河上肇に学びましたが、在学中に起こった京都学連事件に関与したため、逮捕され禁錮10か月の判決を受けたことで、この学び舎を去ることとなります。

学業を中断後、彼は産業労働調査所で活動を開始し、1927年に日本共産党に加入。特に「非常時共産党」として知られる時期には党中央委員に選出され、広告や宣伝部門、さらには農民部の部長としても活躍しました。彼は、実際に活版印刷により党の機関紙『赤旗』の発行も指導し、労働者たちに向けた情報提供に尽力しました。

しかし、1932年10月30日、岩田は神田区今川小路でニッカボッカ姿で歩いているところを特別高等警察に逮捕されます。彼はその4日後、警察署内で命を落としました。警察の報告によれば、死因は肺結核や栄養不良による心臓衰弱とされていますが、その裏にあるのは過酷な拷問による虐殺だったとする意見も存在します。当時の資料によれば、彼の解剖記録は何者かによって抹消されたとされ、岩田の死は単なる偶然ではなく、政治的な弾圧の一環であった可能性が強いのです。

このような不幸な出来事に対して、岩田の葬儀は12月4日に本所公会堂で行われましたが、約200人が参列する中、集まった人々は警視庁によって一斉に検挙されました。このことは、彼の死がもたらした波紋の一端を示しています。さらに、プロレタリア作家であった松田解子はその死に抗議する詩を執筆し、雑誌『大衆の友』に投稿して友情と連帯のメッセージを発信しました。

岩田の死後、彼の娘・雎鳩（みさご）は政治家の野坂参三の養女となり、彼女の人生もまた、父の影響を色濃く受けたものとなりました。

彼の生涯は、戦前の日本において抑圧されながらも、労働者たちのために声を上げた一人の活動家の物語であり、同時に日本共産党が直面していた困難な時代の象徴として記憶されています。1936年にはコム・アカデミー事件が発生し、岩田が指導した学者らの組織が国家により弾圧されたことも、彼の足跡を後世に伝えています。

このように、岩田義道の生涯は、痛ましい運命の中で輝く一歩を踏み出した日本の労働運動の歴史を物語っています。彼の名は、抑圧された時代にあっても決して忘れ去られることのない、抗議と抵抗の象徴として語り継がれることでしょう。

もう一度検索